勝つために手段を選ばなかったら、悪役になりました ー7ー
「俺の活躍というより、カストルさんのアドバイスのおかげですよ。練習にも付き合ってもらえましたし」
俺や天川織姫の活躍はほんの少しで、ほぼカストルさんの作戦の力。それがなかったら、天川織姫の歌があっても、ボコボコにやられてたと思う。
「カストル氏とは僕も会ってみたいぞ。天川織姫に次ぐ謎の女性らしいではないか」
「謎って……カストルさんは顔を隠してましたけど、普通に会ってくれますし」
何度も練習に付き合ってもらったけど、一度も素顔を見せてくれた事がない。それにマスクをしてて、声もわざと変えてる感じはした。それでも人には隠したい事が一つはあるもんだし、聞かない事にしてる。
「ふむ……カストル氏はそうでも、天川織姫は違うのだろ? 彼女は極端に露出を控えているようだからな」
確かに疑問に思う事が沢山ある。まず戦乙女に一ページ特集記事を貰ったのに、天川織姫本人の写真やコメントが一切ない。運営の方も口を固く閉ざしてる感じで、載ってるのはトレイターやフェアレーター、憶測の記事だ。
それに今回の戦争でカストルさんの作戦であったけど、俺は一人で頑張って、勝利を掴んだわけだ。それなのに戦争後に何の返事もくれないのは、知らない仲じゃないのに悲し過ぎる。
「天川織姫はアイドルになって何をしたいのか? 会員を増やすでもなく、露出が増える可能性がある戦乙女にも何も残さない。歌でさえもだ。星野氏は分かってなさそうだが、カストル氏なら何か知ってるのではないか?」
会員番号一番の俺が知らず、二番のカストルさんの方が知ってるのは複雑だけど、その可能性はあると俺も思う。前回と違い、天川織姫は歌といえばいいのか、声を出したわけだ。天川織姫の判断かもしれないけど、カストルさんが頼んだ可能性もあるわけだ。
俺と只野さんがカストルに対して悩んでると、家のドアがノックする音が聞こえた。宅配の人かとドア越しに覗いてみると、立っていたのはカストルさんだった。