勝つために手段を選ばなかったら、悪役になりました ー1ー
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アイドル戦記の対戦は一週間に一回じゃなく、数回あるみたいだ。運営から連絡が入って、今度の土曜日に戦争が入ってた。
それまでカストルさんが練習に付き合ってくれたけど、どれだけお金を使う事になったか。
しかも、そのためにバイトの日数を増やそうにもアイドル戦記と日程がかぶり、只野さんに代わってもらう始末。普通ならアイドル戦記よりもバイトを優先するべきなんだけど、今回はそうも言ってられない。只野さんも明日香ちゃんから話を聞いたみたいだけど、何も変わらず接してくれて、只野さんの方から代わる事を提案してくれた。
そのおかげで、戦争当日の土曜日。前よりは操縦が上手くなったし、カストルさんからも戦術を教えてもらった状態で望む事が出来たわけだ。
相手はマチルダ。アイドルとしては年を取ってる感じ。年齢も不詳にしてる。ハスキーボイスを持ち味に、ファンは十五人。戦場は市街地C、巨大な橋を中心に二つの都市に分かれ、それが其々のエリアとなる。
「まずは戦場を知る事。この本があるから、事前に確認出来るわね。それによって戦い方を変えるわけ」
カストルさんの言葉を思い出しながら、俺が操縦するトレイターは市街地に降り立った。
「高低差のある場所では勿論上を確保する事。トレイターは遠距離、射撃重視の武器だから狙い撃ちしやすいのよ。アンタが一人で出撃だから、高い確率で時間のハンデがつくはず。その時に移動するべきね」
俺は指示通りに橋前にある十階建てのビルに身を潜める。
「勝利条件がリーダー撃破以外だったら、敵の全滅を狙うべき。逃げ切る事を考えない事」
時間をオーバーした時の勝利は生存率が高い方。俺一人しかいないわけだから、一機倒した時点で逃げる事もありなんだけど、そういう気持ちが駄目らしい。