夏イベントは海、祭、肝試し ー132ー
「ブラックホールというか、魔物みたいじゃないか」
すぐに北側へ離脱すれば良いんだけど、ぎりぎりまで様子を見る事にする。あそこから魔物型、本体が出現するかもしれない。
「おい! お前達邪魔なんだよ」
参加者達の攻撃、機体が視界を塞ぐのでブラックホールに集中出来ない。なので、撃破していくのは仕方ない。
「何だ……機体の色が変化してる?」
いつの間にか参加者達の機体の色が灰色に変化し、身動き一つしない。どこも損傷した様子もなく、煙も出ていない。
ブラックホールから出る無数の手は中に取り込む事が目的ではなく、機体をすり抜けてコクピット部分を狙ってる。その箇所にあるという設定だけなのに、手が突け抜けた後に機体が色を失っていく。その手には何かを掴んでるような形になっている。まるで魂を抜かれたかのような。
機体達はそうならないためにも手に攻撃を仕掛ける。無効ではなく、手は消滅していく。中には色を変えないままに、ブラックホールに吸い込まれる機体もある。
だが、その機体は星側へ吐き出されるように、通り抜けるように落ちていく。灰色の機体だけが消え、何かを掴んだ手も他に攻撃もせず、中に戻っていく。
「何だ……何か聴こえてくる……ちょっと待ってくれよ」
その歌声は織姫であって、一緒に無数の歓声も聴こえてくる。それはブラックホールの中から流れてきているのか? トレイターの性能を上げるのではなく、手の動きを速くしている。
時間も限界。俺は北側エリアに離脱。信じられないのを聴いた気分になった。それとブラックホールがあの世界に繋がっているようにも思えてしまった。あの無数の手は、謎の人物に助けてもらった時の白い穴から出ようとした相手のような。




