女子二人を相手にするのは許容範囲を越えてます ー8ー
「カストルさん、アンタ凄いよ」
攻撃が当たらなかった悔しさよりも、カストルさんの操縦技術に感心してしまった。練習なんてチュートリアルの一回だけで、フェアレーターの機体の性能だけじゃなく、武器の飛び出し方とかも熟知したわけだ。俺とは取り組み方が全然違う。
「またお金を払うから、練習に付き合ってください。今度はスパルタでもいいから」
今思えば、さっきのお返しと思っての攻撃なんて恥ずかしい限りだ。カストルさんに器の小さい男と言われても仕方がない。その性根を直すためにもスパルタでも練習に付き合ってもらわないと駄目だ。千円までなら払う事は可能だ。
「ちょっと待ちなさいよ」
そう声を出したのはカストルさんじゃなく、明日香ちゃん。後ろから俺達の練習を見ていたようだ。それが終わるまで声を掛けないなんて案外律儀なのかもしれない。
「怪しい奴だけど、操縦技術はお兄が言ってたように確かみたいね。もう一度言うわ。貴女の力が欲しいの。お兄と一緒なら、私はもっと上に行く事が出来る。天川織姫ってアイドルに付くよりも、星野さんと一緒に戦うよりも楽しめると思うのよ」
明日香ちゃんはカストルさんの操縦技術を見て、諦めるつもりはなくなったようだ。それに俺の事を馬鹿にしてる気がするのは気のせいなんだろうか。
「しつこい奴。私がアイドルよりも機体の操縦を楽しんでると思うわけね? 残念だけど、私は織姫のダ・イ・イ・チのファンなの。貴女よりも実力は上だから」
第一のファンを強調したのは俺への当てつけか。あの操縦の上手さから、明日香ちゃんはアイドルよりもゲーム自体を楽しんでると思ったのかもしれない。それに対して、天川織姫よりも明日香ちゃんが下と返したのは宣戦布告のようにも思えてくる。
「天川織姫が私よりも上? それをどうやって説明するわけ。私とアイドル戦記で勝負してみる? そのためにはC級、私に追い付かないと駄目だけど」
「その前に天川織姫の歌の力を見せてあげる。次の戦争に私は参戦しない。彦星の実力は見たわよね。彼一人で戦うもらって、歌の力で勝利に導かせるわ」
「ちょっ!」
「分かったわ。まずは天川織姫の実力を見てあげる。喧嘩を売ってきたんだから、それなりの力を見せなさいよね」
明日香ちゃんの性格はこれが素な気がしてきた。俺と最初に会った時は演技してたわけだ。それにしても、何で俺が巻き込まれないと駄目なんだ。天川織姫よりもカストルさんの方が偉そうな感じな気がするし、明日香ちゃんもそれに納得するって事は、俺の操縦が下手って思ってるからだろ。