夏イベントは海、祭、肝試し ー120ー
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八雲さんのイベントが終了した。最後の挨拶の際、八雲さんと明日香ちゃん、ダンスマンの姿があった。歓声や握手はまばら。
それはそうだ。ライブは成功したと思うけど、参加者達にとって戦闘の方はぐだぐたに近い。
制限時間内に突破する一戦目は良いとして、テオドラが待つ二戦目。敵が強すぎたせいで、協力とか関係ない。CPUのボーン達が八雲さんを守り、仕留めたのもその本人。何も出来なかったに近いわけだ。
「ちょっと、どういう事か説明しなさい!」
舞台裏、明日香ちゃんは掴みかかっていた。それはダンスマンにじゃなくて、八雲さんに。ダンスマンは仕事があるのか、すぐにいなくなった。挨拶の時にはラップ口調の男バージョン。女性バージョンは一切話す事はなかった。
「ご、ごめんなさい。盛り上げるためにマネージャーが演技をしろって言うから。ダンスマンと話も通ってあるからって」
それは嘘だ。ダンスマンの激昂ぶりを見たら、知らされてない。
「何言ってるのよ! こっちは……もう! 索敵を見たらプリンセスは確認出来ないって。無敵状態ってやつ? テオドラの攻撃が届かなかったのもそのせいね。イベントとしては失敗だったじゃない」
場内のホールという狭い舞台。敵は視認で確認出来るから、索敵は使わなくて済んだ。ボーンの攻撃がプリンセスに届いたのもCPUだから。もしくはメンテナンス時に弄くった可能性もある。
「いえ、概ね目的は達成しましたので、成功ですよ。失敗はダンスマンのせいに出来ますしね」
明日香ちゃんと八雲さんの間にマネージャーが割って入った。
「ダンスマンのせいって……八雲のイベントでしょ。全部を彼のせいに出来るわけない。それに協力したあげたのに、騙すような形はどうなの? リベンジ戦だなんて……馬鹿みたいじゃない」
「それは謝ります。こちらもリハーサル時に決定したもので。ですが、八雲はこのイベントで上に、S級に上がる存在になったはずです」
マネージャーは何を言ってるんだろう。S級になるなんて竹中かぐやと同等になるわけで、八雲さんに未だオーラは感じ取れない。
「色んなのを利用する戦略。ダンスマンとのコラボ、その上で竹中かぐやのイベントに参加する事も確定している。実力は関係なく、注目はされる」
フェイカーさん、銀河も元アイドルだから、売り方の方法を知っている。明日香ちゃんも利用された形なわけだ。
「そう思ってくれても構いません。後の片付けなどは私達だけで十分ですので、お引き取りを。八雲はこれからしなければならない事がありますので」
マネージャーの一言で、ガードマン達が集まってきた。これ以上話す事はないって事だ。
「本当にごめんなさい。後で連絡するから!」
ガードマンに連れて行かれる中、八雲さんは明日香ちゃんに向けて叫んだ。けど、その日に八雲さんから電話、メールアドレス、クロスにも連絡は一切なかった。




