夏イベントは海、祭、肝試し ー114ー
☆
「フェアレーター……親父さんが用意したのはこれか。カストルさんも一言声を掛けてくれたら良いのに」
内部に到着すると、フェアレーターが消失する姿が見えた。撃破されたのではなく、別の理由で退場となったようだ。それでも明日香ちゃんと八雲さんが乗るプリンスとプリンセスは無事とまではいかないが、生き残ってくれている。
「それにしても……異常に激怒してるのは何でだ? 全員がノービスに乗ってるのに俺と分かってるみたいだし」
ノービスの到着後にダンスマンが用意していた言葉じゃない。『お前』というのは全員に対してじゃないし、『偽者』というのも意味が分からない。それにすぐにテオドラとの戦闘に入るわけじゃなかったからだ。
今の状況はプリンスが両腕を破壊され、戦闘続行は難しい。プリンセスの損傷は軽微。明日香ちゃんが八雲さんを守ってくれた証拠だろう。ダンスマン側はボーンが一機も存在せず、テオドラも撃破寸前。フェアレーターがそれをしたのは目に見える。
ボーン達の増援が出現するまでにとどめをさせれば勝てるかもしれないけど、プリンスも同じだから危険で五分五分の状態だ。
『エラー発生。侵入者の攻撃により、様々な修復をするため、戦闘開始は一分後となります』
ダンスマンが俺に向けた直後、アナウンスが流れてきた。これは戦闘準備と同じであり、今の状況は観戦する事が出来ない。これがイベントに用意されたセリフじゃない事が分かってしまう。
「ちょっと! 来るのが遅くないですか。アイツに借りを作った形になったんですよ。まぁ……それで助かったんだけど」
戦闘準備に入った事もあるのか、明日香ちゃんと通信が繋がった。
「こっちも色々とあってね。俺が一番乗りだけど、後からフェイカーさんや他の参加者達も押し寄せる。こっちが断然有利なはず……」
一分のメンテナンス。それによってボーンが数機出現。それでも五機だけ。テオドラが修復、フェアレーターが倒した数が再生するかもしれなかった。それがテオドラではなく、別の機体に切り替えた。いや、換装した形といえばいいのか。ダンサースタイルに変わったわけじゃない。
女王繋がりなのか、クイーンの機体とテオドラを合体されたような。両手に鉄化扇を持つだけでなく、ドレスの部分に無数の武器が追加。他に拳ほどの丸い球体が二つ、テオドラの肩の上に浮かんでいる。




