夏イベントは海、祭、肝試し ー108ー
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「はぁ……トレイターとフェイカー機に乗る事はなかったか」
戦場は中世西洋の市街地。先には城が見え、門は閉ざされた状態になっている。敵であるボーンの姿はなく、城壁には大砲が無数に設置されているようだ。
「それは仕方ない。この場でトレイターなど搭乗していれば特別扱いで叩かれる事になる。まずはこの集団を抜け出すか、利用する事を考えよう」
戦闘開始三分前。各自筐体に入ってるけど、明日香ちゃんは無理だけど、只野さんとはまだ連絡が取り合えてる。
今は全員が戦場で待機してる状態。しかも、俺と只野さんがいるのは集団の最後尾。最前列が良かったけど、途中で参加が決まったから仕方がない。真ん中じゃないだけ良かったと考えよう。
全員が搭乗するのはノービスで改造とかされてない以上、機体性能は同じ。最後尾から最初に城に入るのは至難の技だろう。ここは操縦技術が物を言うところだ。けど、真ん中だとそうもいかない。団子状態だと全員が同じ行動を取る事になると思う。それに城にある大砲が飾りでなければ、避けるのが難しく、撃破覚悟で進まないと駄目になる。
「親父さんが仕掛けた感じなのは……まだ分からないみたいですね」
武器も銃系はなく、近接のみ。これが違うだけで戦闘状況は変わってくるんだけど、それもない。トラップでも仕掛けるにしても、俺達に分からなければ、自分達が嵌まってしまう可能性もある。
「戦闘開始のカウントダウンだ。直進するのではなく遠回り、もしくは機体を踏みつけながらも進んでいくか。状況を確認しながらの行動をしよう」
只野さんの言葉が終わると同時に、戦闘開始の音が鳴らされる。門が開き、跳ね橋も降り、ボーンが途切れる事なく登場する。百機、それ以上は出てくると思っておこう。
先頭集団はボーン達と戦うために進軍を開始。その中でライブでも聴いた八雲さんの曲が流れてくる。バラードでスローテンポな曲ながらも、相反して機動力を高める。通常の戦闘は三十分に対して、今回は十五分で戦場を抜けなければならない。開始直後に使うのがベスト。
けど、これは八雲さん本人が今歌ってるのではなく、録音された物。八雲さんの所属の判断だろう。




