夏イベントは海、祭、肝試し ー97ー
「凄い……これがトップアイドルの実力。私には全然無理だ」
明日香ちゃんは不意に言葉が漏れた。今披露したのは銀河じゃなく、只野さんとだと俺は思ってる。けど、踊りという面では銀河も可能なのかもしれない。それよりも明日香ちゃんの目が向いたのは、観客達。全員が銀河のファンではないのに、銀河のために製作されたオタ芸を披露した事。ファンの垣根を越えてる。
「本当にそうだね。ちゃんとファンの事を見てる証拠になるもん。ファンからしたらどれだけ嬉しいと思うんだろ。私も習おうかな」
八雲も銀河の行動に感動してるみたいだ。アイドルにとって、ファンとの一体感は大切。この状態は勉強になると思う。
「相手戦意喪失、流石銀河、本当にお前は銀河? 次の相手は誰だ?」
ダンスマンは次の対戦相手の登場を促した。この盛り上がりに、次の相手はやりにくいかもと思うけど、観客達が全員手を挙げたりと、対戦したい気持ちで一杯だ。その中から一人、ダンスしながら登場。サラリーマンとは違って無口。言葉でなく、踊りで表現する。
「女同士の争い、男女の争い、ダンスの争い」
ダンスマンはテンションが高まったのか、踊りながら実況する。登場したのは制服を着た女子高生。コスプレをした男や年齢詐称してるわけじゃない。サラリーマンはオタ芸を披露する女を否定しながら、次の相手が女子とは皮肉なもんだ。
けど、そんな事よりもダンスマンの進行の言葉に微妙ながら気になる事がある。女子高生とオタ芸バトルするのはフェイカーさんなわけで、男女の争いと言うのなら、俺が相手になるわけだ。それに加えて、全員気にしてないかもしれないけど、『本当にお前は銀河?』と疑ってる言葉も含まれてた。
オタ芸バトルは進んでいく。女子高生は可愛いらしくオタ芸を披露するんじゃなく、本気にやるから周囲も盛り上がりもヒートアップする。
女子高生とフェイカーさんは互いのオタ芸を讃えて、ペンライトの交換をしたりもしている。勿論、勝利したのはフェイカーさん。




