夏イベントは海、祭、肝試し ー95ー
流れるのはサクラを題した曲。自分の体は木であり、ペンライトで花をイメージする。反り返りをして、風に吹かれるイメージも。
「なんだ……全然格好良くないし、あれがオタ芸なのか。スピードも全くないぞ」
観客達からは大クレーム。メインイベントのくせに、登場したのは素人なんだから。すでにギブアップをしたい気分だ。
曲が変わって、次はサラリーマンの番。二回目はすでにカツラを脱ぎ捨てての登場。
「サラリーは紋章系のオタ芸を披露! さすが老年の勝者だぜ。動きにキレがありありだ」
ダンスマンも別の紋章技を披露する。俺もその姿を見て格好良いと普通なら思ってたところだけど、サラリーマンは笑いも取り入れようとしている。
一回目はカツラの絶妙な動きだったけど、今度は股関部分。社会の窓が全開になっていて、そこにペンライトを隠し入れた。ビームでも出すかのように光が点滅してる。もしくは、それこそが紋章とでも言いたいのか。
「星野氏では荷が重い。バトンタッチだ」
そう言って、ペンライトを奪い取ったのはフェイカーさん。星野氏と呼んだ事から、銀河じゃなくて只野さんが体を動かすつもりだ。
「おい……あの人って……銀河じゃないか」
観客の一人が銀河の姿に気付いた。アイドルのために披露するオタ芸が、自身が踊るとなると強烈なインパクトとなる。




