夏イベントは海、祭、肝試し ー89ー
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「二人共負けてしまいましたね。エンペラーが相手となれば仕方がありませんよ」
第三審査が終了し、夜野さんは最終審査を調べる前に見るのを止めてしまった。明日香ちゃんやフェイカーさんが離脱した後、筐体から出てきたので無事だったのは確認している。
「それよりも……いえ……あれはエンペラーじゃないと思うんですよ」
夜野さんは俺や明日香ちゃんの口から出るエンペラーという言葉に調べたのかもしれない。勝利条件にも名前が出ていた。姿は確かにエンペラーに似ていた。けど、動きがまるで違う。
重なって出現した影のような存在もそうだ。エンペラーと影、その間に別の何かが見えた気した。
「……そうなんですか? それでも惜しかったと思いますよ。何かに気を取られた感じがありましたが、それさえなければ分かりませんでしたね」
みかん機が敵として登場した時は驚いたけど、影が実体化した時にカシオペアのユニフォーム、みかんちゃん用を着ていた事はその上をいく。
只野さんもみかんちゃんが五右衛門やジェミニさんのような存在になるのかと恐れたかもしれないし、撃破するのかも悩んだと思う。だからこそ、隙を見せてしまったと思う。
けど、只野さんとフェイカーさんが撃破された時に影の顔が実体化した。それはみかんちゃんとは別人。俺が知ってるほどの有名なアイドルでもない。
見えてない素振りをしたけど、あのタイミングで夜野さんが小さな声で名前を呼んだ。自分では気付いてないのか、無意識に出た言葉なのか。
「あの……っと、蒼さんからクロスの連絡……このタイミングで」
蒼さんからの通知。それは意識不明に陥ったみかんちゃんが目を覚ましたという事だった。




