夏イベントは海、祭、肝試し ー73ー
『これは練習ではありません。第二次審査です。貴女達の前に敵が二機。機体カラーから分かると思いますが、操縦するのは抽選で選ばれた其々のファンです。彼等は快く引き受けてくれました』
アイドル達も驚いただろう。練習と思いきや、実はこの戦闘も審査に入るなんて。彼女達の声は聞こえないけど、文句の一つや二つは言ってそうだ。
『この審査では二機に勝利する事。経験の差は機体性能が補っています。武器に関しても、相手は初期装備であるペンライト型ナイフとグレネード。貴女達も見知った武器。こちらの武器がどのようなのかは事前に教えているはずです』
二機は違う機体ではなく、色違いのノービス。モブ改でないのは、ノービスでも試作機との性能差がかけ離れているからだ。B級以下のアイドルのファン達で、その差を埋めるなんて。俺だったら絶対無理。初心者でも負ける自信がある。まぁ、審査とは名ばかりで、アイドルが勝つように出来てるのかもしれない。相手はファンなわけだし、応援してるアイドルのスターになる第一歩の邪魔するわけがない。
『最後に一つ。貴女達が敗北する事によって大事な物を失うように、相手も敗北すれば失う物があり、それを知りません。それはファンを辞めるはめになる事。貴女達が進むために、ファンを切り捨てなければなりません。では……開始五秒前』
ファンがその事を知らされてないのは酷い。ファンは練習相手になるだけと思ってるかもしれないのに、負けた時点でファンを辞めさせられてるわけだ。ファンを第一に考えて、負けるアイドルはいるんだろうか? 自分だけならまだしも、二人組となれば話は違ってくる。
結果、アイドルはファン二人を撃破した。ファンは連携を取るなど本気は出さず、練習相手として戦闘をした。アイドルの方も瞬時に倒す性能がありながらも、躊躇いがあったかもしれない。
「……ありがとうございます。他は見なくても大丈夫です。明日香ちゃんが負けるとは思わないし……ここで落ちるアイドルはいない気がします」
第二次審査で落ちるアイドルを待ち続けるわけにもいかないから、フェイカーさんを探すために次の映像へ移る事にした。その中で、誰かが担架に運ばれる映像があった。それはアイドルでもなく、天帝ビルに働く社員でもない。俺よりも少し若いくらいの男。その後にも誰かが何処かへ運ばれていく。全く身動きもしないから、人ではなく人形、ロボットかもしれない。




