女子二人を相手にするのは許容範囲を越えてます ー3ー
「それでもですよ! 何事でも注目されないと、存在を知って貰えないんだから」
明日香ちゃんは熱弁するけど、本当にどこまでついてくるつもりなんだろう。俺に用があるような感じもしないし。
「只野さんなら目立つような事をしてくれそうだけど……あの……人と会う約束があるから」
「それって、星野さんの彼女だったりするんですか? 星野さんは格好いいから」
今度は無視する事はなかったけど、そう返してくるとは思ってなかった。勿論俺に彼女なんていない。基本的に俺は女子とどう話していいか分からず、苦手としてる。明日香ちゃんみたいに積極的に話してくる女子なんて滅多にいないし、格好いいとか言われた事もない。天川織姫に関しては……何とも言えない。
「俺が格好いいなんて……彼女なんていないよ。今から会うのは天川織姫のもう一人のファンだから。練習相手になってもらうんだよ」
「そうなんだ。近くにゲームセンターがあるもんね。丁度私もそこに行くつもりだったんだ」
絶対に嘘だ。というか、俺の失言だ。ファンと会うって事はフェアレーターを操縦してる人物だと明日香ちゃんも分かるはず。なんせ、二人しかいないわけだし。もしかしたら、西園寺アスカのファンへ引き込もうとしてるのかも。俺に近付いてきたのもそのためで、トレイターとフェアレーターが注目されてる事を何度も口にしてるわけだし。
だからって、俺からカストルさんに待ち合わせ場所を変える事なんて出来ない。
「楽しみだな〜。練習風景も側にあるスクリーンで見る事が出来るんだから」
その言葉を発した時点で、目的は俺達にあるって言ってるようなもんだ。こっちは紹介するとも言ってないし、明日香ちゃんを連れて行く事で、カストルさんの出方も分からない。
そう考えてる間に、目的地のゲームセンターに着いてしまった。
「えっと……」
俺はカストルさんを探してみる。明日香ちゃんも俺の側から離れる様子がないのはネックなんだけど。それに場所と日時を教えてもらっただけで、どんな人か聞いてないし、カストルさんも俺が彦星なんて分からないだろう。
「君が彦星だよね」
俺以外にもゲームセンターに入ってくる男達がいるのにも関わらず、彦星だと声を掛けてきた人物がいた。声は女と分かるんだけど、その相手は帽子にサングラス、マスクを装備していた。変質者と言うべきか、正体を隠したいのか。思わず、違いますと答えたい気持ちになる。