夏イベントは海、祭、肝試し ー55ー
「分かった。ファン達にそうするよう指示するけど……この状況なら全滅しても構わない。以前、彦星さんは撃破されたら意識を失うと言ってたけど、誰一人そうなった人はいなかった。五右衛門やジェミニの歌声が聞こえてくるけど、今回も大丈夫じゃないの」
蒼さんは夢椿さんが入れ替わってる事を知らない。違和感も感じてないかもしれない。それを教えても信じるかも分からず、動揺させるわけにもいかない。さらに異常な出来事だと感じながらも、何も起こらないと思っているみたいだ。
「でも……ここが異常だと思うなら、最悪の展開も考えておくべきだと思うんですよ。それにファン達も勝ちたいと思ってるはずだし、生き残りたいはず」
「私も負けたいわけじゃないから。彦星さんがそこまで勝ちにこだわるなんて」
ファン達が撃破されても意識を失わないのなら、蒼さんを守るために海中に全機投入するのも手だ。けど、蒼さんが知らないだけかもしれない。ただ、言えるのは試作機が撃破されれば蒼さんは意識を失う。この世界が現れたのも、蒼さんが狙いと思うべき。
「私が言うメンバーは海中戦に。他のメンバーはそのために補助をお願い」
蒼さんは操縦が上手いメンバーを選んだ。触手の出現はBossが大型戦艦ではないはずであり、さらにゾンビ機体がいる可能性も考慮しなければならないからだ。
「……ごめん」
俺は通信が繋がってる状態で思わず謝ってしまった。それは地上に残る機体に。操縦が上手いファン達が向かえば、地上のファン達の生存の可能性は低くなる。それを知りながらも分別しなければならない。しかも、触手の数は増えていく。。
「謝る必要はない」
俺の言葉に返答があるとは思いもしなかった。しかも、俺が知ってる人物。
「だって、私達が来たんだから!」
暗雲を切り裂いて登場したのはリベリオンとフェイカー機。二機が連続射撃によって触手の一本を消失された。
「えっ! どうやって? スタッフに連絡がつかないし、筐体も用意してなかったはずなのに」
リベリオンとフェイカー機の出現に、蒼さんも驚いた。この世界に来れたのもそうだが、筐体もステージに用意されてなかった。
「筐体は練習用のを無理矢理繋げてもらったの。こんな世界になるとは思わなかったけど、私達は決まった時間に登場する事に設定していたから、それで入れたと思う」
明日香ちゃんが蒼さんのマネージャーに話してたのは戦闘に参加するためだろう。フェイカーさんが一緒であり、歌う機能のついた機体。ライブは無理でも戦闘時に歌うという条件を提示したのかもしれない。




