夏イベントは海、祭、肝試し ー50ー
「蒼ちゃん。メインはライブなんだから、アイドル戦記の練習時間はあまり取れないから……って、銀河じゃないか! 突然連絡が取れなくなったからビックリしたんだ。上からは引退したと言われたし」
蒼さんのマネージャーらしき人がスケジュールを告げに部屋に入ってきたんだけど、フェイカーさんが川本銀河だと知ってるみたいだった。
「すみません。体を悪くしてしまって……今は蒼さんのマネージャーをしてるんですね」
「そうなんだ……ちょっと待ってね」
「銀河って……スターマーメイド所属で一番と言われてた歌手。私の元先輩というわけですか。天川織姫が……いや、貴方が凄いのかしら? 元アイドルが二人いるわけだし、貴方は一緒に行動してるんだから。他のメンバーもアイドルだったりするんじゃないの」
フェイカーさんが川本銀河だと知っても、マネージャーとか明日香ちゃんとは違って、蒼さんに驚いた様子はなかった。
「……偶然だと思うけど」
カストルさんや親父さんがアイドルだなんて一度も思った事はなかった。けど、親父さんは置いておくとして、カストルはその可能性がないとも言えない。
俺や明日香ちゃんに素顔を見せた事はないし、この旅に同行しないのもアイドル活動をしてるからかもしれない。もしくは明日香ちゃん同様元アイドルか。
「……はい、分かりました。蒼ちゃんと銀河さえ良ければ、スペシャルゲストとしてライブに登場する許しを上から貰えたんだけど。曲だって用意する事は可能だし」
元アイドルだとしても、明日香ちゃんやフェイカーさんみたいに別のアイドルや事務所に誘われる事もあるようだから、カストルさんにも可能性があるわけだ。
「私は先輩さえ良ければ、別に構いませんよ。一番と呼ばれたとしても、負けるつもりもありませんから」
「いえ……皆さんの前に立つつもりはないので。川本銀河というのはそんな存在じゃなかった事は一番知ってるはず。私は天川織姫のファンの一人に過ぎないです」
フェイカーさんはライブに参加するのを拒否した。川本銀河の存在は謎のままでありたいのかもしれない。それは今の天川織姫にも言える事なのかもしれないけど。
「そういう事みたいだから諦めなさい。練習する時間も少ないのだから、マネージャーも邪魔しないでください。彦星さんは一緒に来て……先輩達はあちら側に」
マネージャーは食い下がろうとするのを蒼さんは割り切ったように止め、練習するために俺と共に二人乗りの筐体に座った。
一方、明日香ちゃんとフェイカーさんもマネージャーに連れられ、準備を始めた。その時、フェイカーさんではなく、明日香ちゃんがマネージャーに何かを話してる感じがあった。




