夏イベントは海、祭、肝試し ー48ー
「皆さん、海が見えてきましたよ」
横山海岸はまだ先だけど、海の景色が俺達の目に入ってきた。別の海岸なんだろうけど、夏休みに突入してるせいか人で溢れかえっている。ここでそうなら、蒼さんのイベントがある横山海岸はそれ以上が予想される。
「うわぁ……ここでこの人だかりなら、カシオペアメンバーの一人である蒼だと……考えるだけで暑苦しいかも」
想像してみよう。明日香ちゃんが言ってるのはアイドル戦記ではなく、ライブの方。筐体も熱で滅茶苦茶熱くなってるかもしれないけど、それは置いておこう。
蒼さんは海でのライブという事で水着を着用するはず。ファンでなくとも生の水着姿が一番の期待はそこかもしれない。けど、水着を着るのは蒼さんだけじゃなく、観客達もそうだ。男ばかりだとライブによる熱気によって汗臭さが充満しそうだ。
「私は水着は持ってきてませんし、ライブを楽しむ体力があるかどうか。近くにある喫茶店で時間を潰してます。あっ……サインはお願いします」
まぁ、夜野さんの水着は興味がないし、ライブではしゃぐ姿が想像出来ない。
「私も参加出来ないのなら、別の場所で時間を潰します。水着も用意してないし、一応病み上がりなので」
フェイカーさんも不参加。海に入れば暑さも抑えれるかもしれないけど、エアコンとか効いた店の方が休める。水着姿が見れないのは非常に残念だけど、只野さんの口調で話した時に顔を思い出し、女子用の水着姿を想像してしまうと最悪かも。
「う〜ん……二人が行かないなら私もかな。イベント会場では星野さんだけが蒼のいる場所に案内される気がするし。一人でいる時にナンパされるのも面倒だし」
俺は心の中で叫んだ。明日香ちゃんはナンパされるのが当然みたいに言ってるけど、アイドルをするぐらいにポテンシャルは高い。蒼さんやフェイカーさんの水着姿も楽しみだったけど、一番身近である明日香ちゃんの水着を見たかった。
「って、ははぁ〜ん……何で星野さんがそんなに残念そうな顔をするんだよ。もしかして、私の水着姿が見れないから」
明日香ちゃんはニヤニヤしながら俺を見てきたけど、あまりの残念さから反射的に頷いてしまった。
「えっ! あっ……えっ……そうなんだ。実は水着もちゃんと持ってきてたから着るのもありかな。けど、待つのは舞台裏とかにして欲しいかな」
明日香ちゃんはその返しを予想してなかったみたいで、ニヤニヤしたのが一転してオドオドした後、そっぽを向きながらも、水着を着てくれるのを許してくれた。




