夏イベントは海、祭、肝試し ー45ー
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「ふぁ……眠い。車の中で熟睡は無理。今日は蒼さんが宿を準備してくれてるから良いけど、次は二人だけとか止めてくれ」
車内で寝たせいか、体が完全に回復してない気がする。寝相が悪かったのか、座席の下に落ちたりと散々だったし。
「分かってるてば。ゾンビみたいな動きを見たら……流石に可哀想だったし。夜野さんは何ともなさそうなんだけど」
時間は午前八時。明日香ちゃんとフェイカーさんは宿から車に戻り、次のイベント会場に向かってる最中だ。
俺とフェイカーさんが二人で会ってた事は明日香ちゃんも気付いてないようで、何も変わる事なく接してきている。違いがあるとすれば、明日香ちゃんのフェイカーさんの呼び方が銀河に変わってた事ぐらい。
「そうですか? 見た限りでは星野さんもぐっすり寝ていたのですが」
夜野さんは全然眠そうじゃなく、普通に運転している。俺がぐっすり寝ていたというけど、夜野さんが再び何処かへ行った事は分かってる。それを追求する気はないけど、別の宿に泊まったのかもしれない。
「いやいや……そんな事言わないでくださいよ。それよりも蒼さんのイベントを行くので問題ないんだよね?」
蒼さんのイベントは横山海岸で午後零時に行われる。二時間もあれば到着出来るわけなんだけど、開始まで二時間の余裕がある。他のアイドル達のイベントを考えれば、蒼さんのイベントが終わるまでに、午前十時、午後零時に開始されるイベント二つが参加可能だった。
「勿論。カシオペアのメンバーに会えるのも嬉しいのもあるけど、有名アイドルとなればエンペラーとの戦闘の権利が貰えると思うし」
確かに蒼さんが俺を呼ぶのは、イベントがアイドル戦記関連だからだと思う。それにカシオペアのメンバーというのもポイントの一つかもしれない。只野さんから聞いた夢椿さんの件。エンペラーが関係してる可能性もある。
「良かった。蒼さんにはもう一度会いたかったから」
「何……あんな感じがタイプなの?」
明日香ちゃんはジト目で見てくる。カシオペアライブの時に何かあったと疑ってるみたいだ。
「そういうのじゃなくて……っと」
俺が蒼さんに会いたいのは夢椿さんに変わった感じがあるかを聞きたいから。声優もやってるから会う機会は何度もあるはずだし、別人だと思ってるかもしれない。
蒼さんの事を話してると、携帯に『クロス』が入った。クロスはメールみたいなやり取りを簡単にしたもので、相手がそれを見たかも分かる連絡ツールだ。それも連絡してきたのは蒼さん。
あの出来事のおかげというべきか、カシオペアとクロスで連絡が可能となった。まぁ、こっちからは恐れおおくて連絡出来てないんだけど、イベントに関しては、ここから教えてもらったわけだ。ちなみにカシオペア以外は登録しておらず、クロスも無理矢理ダウンロードされたわけなんだけど。
『結局どうするわけ? 普通は前日にでも連絡してくると思うのだけど。ここで断るというのも最悪ね』
そういえば、蒼さんにちゃんとした返事をしてなかったかもしれない。このメッセージを見る限り、かなり怒ってる感じだ。




