夏イベントは海、祭、肝試し ー43ー
「……分からない。僕達が捕らえられた場所は悪い場所ではなく、この世界よりも安らぎがあると思える場所。綺麗な花畑が広がり、誰かの歌声が響いていた。その中にあった唯一の悪意。黒い霧のようであり、人の形をする事もあった。それが分裂するようになり、一つが空へと消えた。その後にPモブが出現し、追えと言ってるようだった」
只野さんだけでなく、フェイカーさんや夢椿さんも黒い何かが悪意だと思ったらしい。それがこの世界に出るために夢椿さんの体を乗っ取った。
「う〜ん……只野さんの言葉が嘘だとは思わないですけど、夢椿さんの偽者は今のところ悪さとかしてないかと。急激に人気が増えたのもアニメのおかげかもしれないですし、そんな事すればネットで噂とかなるわけで……いや、夢椿さんは元の体に戻すつもりなら協力しますよ」
「彼の体ですよ。それだけでなく、他の人達を戻す方法も何か分かるかもしれない」
今回の旅はエンペラー撃破のためじゃなく、夢椿さんの体を取り戻すためになった。それが只野さんの体を戻すのとイコールになるかもしれない。
「あっ! フェイカーさんに聞きたい事があるんです。アイドル戦記の開発に協力してたのなら、他に協力していたアイドル……新人アイドルとかはいなかったんですか? 竹中かぐや……天川織姫は」
「私以外で別のアイドル……かぐやと織姫……誰かが居たような……二人じゃなく、一人だったような」
フェイカーさんも開発に参加していたのなら、協力していたアイドルの二人を知っていると思った。けど、記憶が曖昧なせいで思い出せないみたいだった。もし、二人の内の一人が川本銀河、フェイカーさんなら話が変わってくる。
「えっ! 只野さんもアイドル戦記の開発について調べてたんですよね。何か……うおっ!」
俺はその先の言葉を思わず止めてしまった。フェイカーさんが急に迫ってきたわけじゃない。それはそれでドキドキする反面、只野さんも中に入ってるのでひやひやもするんだけど、実際は車内ではなく、外。夜野さんが少し離れたところから俺達を見ていたからだ。




