アイドル戦記を視聴してみた ー前ー
「さぁ! 今夜お届けする戦いはD級ランク戦。西園寺アスカ対水鏡リン。お互いが勝利すれば初のCD化となり、C級という一つ上の階段に上れる一戦です。実況は一人のアイドルに縛られないオールマイト。解説はロボ全般に詳しい安室さんでお送りします。安室さん、よろしくお願いしますね」
「こちらこそ」
二人は視聴者に一礼する。オールマイトはカツラをかぶり、半々戦争する二人の髪型を真似ているのが印象に残る。安室さんはパーマをかけ、着ている軍服のポケットに愛着のあるアイドル戦記のプラモを入れている。アイドル戦記お馴染みの二人だ。
「さて、フィールドは宇宙。二人にとっては負けられない戦い。お互い持ち歌が一つ。それのCD化ですからね。アイドル側としては三十分の中、どのタイミングで歌うか。歌によってファン達が乗る機体性能が向上しますから。それもタイプ、歌詞によって変わります。水鏡リンはポップな歌で西園寺アスカはラブソング。歌を聴きながら、どう戦況が変わるのか見所ですよ。そして、ファン達はどうなんでしょう、安室さん?」
「そうですね。ファンの数もお互いが三十機ずつ。ファンなりたての者やロボットを操縦したいがためという者もいるのがD級戦。ほぼ乗っているのは量産型モブであり、課金する者は少ない。そんな中、水鏡リンのファンの一人に課金による機体、ノービスがいます。モブの二つ上の機体です。この一体がいるだけで全然違うと思います」
「なるほど。西園寺アスカの方は量産型モブしかいませんね。コアなファンが一人もいないというところでしょうか? おっと、開始前の儀式が始まるようです。水鏡リン側はやはりノービスが前に立ちますね」
儀式とはアメフトのウォークライのように、戦争前にファン達がオタ芸を披露する事。どれだけ揃って見えるか。それがアイドルへの愛とも取れる。それが終わると西園寺アスカのファン達の番となるわけだ。
「オタ芸の名前も凄いですが、数多くありますからね。それを見るのが楽しみな視聴者もいるはずです。西園寺アスカ側の儀式も終わり、カウントダウンに入ります。五……四……三……二……一……開始されました」
水鏡リンの量産型モブ、ノービスの色は名前のように水色。それに対して西園寺アスカのモブは緑色。それだけでなく互いにアイドルのマークが付いてるのが特徴的である。
「今回の勝利条件はリーダー機の撃破とされてますね。三十分を越えて決着がつかない場合は、生存率です。勿論、水鏡リンのリーダーはノービスでしょう。西園寺アスカ側は……戦艦前に一人だけタイガー(虎視眈々)している量産型モブのようですね」
「リーダー撃破が敗北ですから。前線に行くのは危険でしょう。ただ、相手はノービスという機体。やはり、率先して前に出たようです。操縦にも自信があるようですね」
「それだけではありません! 水鏡リンは開始直後に歌い出しましたよ。曲が終わるまで四分半。効果は……機体のスピードを上げたようです。性能が上であるノービスを利用し、攻撃を当たらないようにするためでしょうか?」
「それもありますが……両者の武器がペンライトナイフとグレネード。接近戦となり、ノービスは面白いように攻撃が当たると思います」
安室さんの解説の通りに、西園寺アスカ側のモブ達が簡単に撃破されていく。オタ芸とは違って、部隊としての錬度が足りてない。