夏イベントは海、祭、肝試し ー34ー
このまま何もせずに着地させる事が、忍さんの思惑通りなのかもしれない。読み合いは深みにはまった方が負け。直感を信じて、落ちてくる隼にマシンガンを放った。
銃弾は隼の体を貫いた。隼は避けるだけでなく、防御も放棄していた。勿論わざとやられるためじゃない。マシンガンは隼を撃破もしくは損傷させる事は出来るけど、貫通させるまでの威力はない。
貫いた箇所から空気が漏れ、どこかへ猛烈な勢いで飛んで行く。撃ち落としたのは隼ではなく、その姿をしたバルーン。忍者機らしく、変わり身の術みたいなのを使ったみたいだ。
視認ではなく、索敵で確認すれば分かる。ポイントなのはバルーンも索敵の光にカウントされる事。
隼の狙いはトレイターではなく、最初からリベリオンだった。手裏剣を投げたりしたのも、変わり身を出現させるため。今のリベリオンの状態では追い付かれる。こっちもリベリオンの位置を把握してるけど、時間を少ししか稼げなかったせいか距離を縮めるのが早い。
「明日香ちゃん! 隼がそっちに向かった」
「簡単に仕留められないとは思ってたけど」
明日香ちゃんに焦った様子はなかった。隼の速度ならリベリオンを狙う可能性も想定していたからだ。
それは勿論明日香ちゃんだけじゃなく、俺だってそうだ。何の策も用意してないわけじゃない。
隼がリベリオンを追う事は、トレイターもそちらに向かい、フェイカーのエネルギーを貰える可能性が高くなる。
隼は手裏剣ではなく、空中から降下した勢いを利用して刀でリベリオンを貫こうとした。接近した方が確実に倒せると考えたんだと思う。
けど、それは失敗に終わった。リベリオンを守ったのは三枚の盾。俺は前もってトレイター自身ではなく、リベリオンを守るために盾を送っていた。だから、最初の選択肢には手裏剣を撃ち落とすか、避けるかの二択しかなかったわけだ。




