夏イベントは海、祭、肝試し ー27ー
「くそっ! やられた……って、マジかよ」
炎上した事でこちらの姿が丸わかりになったわけだけど、それは向こう側も同じ。敵の一機を視認出来たけど、武器は中距離の銃器。ミサイルを撃ってきた相手じゃない。抜け出した逆方向から撃ってきたんだろう。索敵でも反対方向二機いるのが確認出来る。
こっちも一機ずつと思って、そちら側から出たわけなんだけど、お互いが視認した以上、銃を構える。索敵で生存が確認出来る以上は早めに撃破しないと、三機同時に相手をしないと駄目になる。
けど、問題はすぐに起きた。建物が破壊された事で起きた火は数秒もしないうちに沈下してしまった。残ってるのは建物の瓦礫のみ。ゲームの中なのだから、設定で火を消す事も可能なんだろう。歌による光以外は極力消し去るつもりなんだろう。
相手は暗闇に戻った事で驚き、銃を真正面から左右に乱射した。こっちが撃たなかった事で逃げるのを選択したと思ったんだろう。それは索敵すれば分かる事なんだけど、突然暗闇に戻った事での動揺、さっきまで自身の目で確認していた事が判断を鈍らせた。
俺は左右どちらにも動かず、しゃがみ込む事を選び、スナイパーライフルを再度構える準備をした。
普通なら銃撃を避けるのには左右のどちらかに移動すると思う。上にジャンプするなら再度避けるのが難しい。咄嗟の動き、反射的に銃を相手にする動きじゃない。
屈み込めば銃の軌道から外れる。さらにトレイターの後ろには瓦礫があり、外れた銃撃はそれに撃ち込まれていく。それによる小さな火花が相手の場所を特定する。最初の銃撃から、左右に広がる。相手がその場から動いてないから、瓦礫に撃ち込まれた銃弾の痕跡がほぼ一列であり、中心部分が撃ち込まれた数が一番多い。
それを踏まえ、索敵と合わせて銃弾を発射する。それは一直線に相手のコクピット部分を貫き、索敵の光は消失した。けど、爆発は起きなかった事で暗闇の状態のままだ。




