夏イベントは海、祭、肝試し ー21ー
明日香ちゃんが選んだ宿泊する旅館は遊園地から目と先の場所にあった。それなのに料金も手頃な値段で少し安心した。けど、街から離れた場所にあるせいか、近くにカラオケやネットカフェは見当たらず、車での宿泊は決定だろう。
「イベントが終わったら連絡してください。それまでは観光でも楽しんできますね」
遊園地に着いたけど、ナイトパレードまでは時間がある。それまでの時間潰しをどうするかで、俺と明日香ちゃん、フェイカーさんは遊園地で遊ぶ事になった。遊園地の中に入るためには入場券が必要で、イベント参加するからと無料になるわけじゃなかった。そのために夜野さんは遊園地に入らず、ドライブを楽しむ事を選んだ。
「夜野さんも気にせず、遊園地を楽しめば良かったのに」
遊園地はそれほど大きいわけではなく、夏休みといっても平日であり、思ったよりも人は多くなかった。アトラクションに集まる人も少なく、一番多いのでもゲームセンター。そこにはアイドル戦記の練習用があるせいか、ナイトパレードのために調整してるのかもしれない。
「まぁまぁ……夜野さんには別の楽しみがあるかもしれないから」
俺達の中で夜野さんだけがアイドル戦記とは無関係で、それなのに運転手を引き受けてくれた。アイドルのサインを貰うのもあるけど、本当に観光を楽しむという事もあったかもしれない。
「夜野氏は絶叫系が苦手とも言ってた。無理をさせるわけにもいかない」
「はぁ……俺も……まずは受付を済ませますか。それで……ここはどのアイドルが受け持ってるんだ?」
実は俺も絶叫系は苦手で、遊園地で時間を潰すという話が出た時にはかなりテンションが下がってしまい、今も引き摺っている。
「A級アイドルみたいだね。まぁ、ここはアイドルで決めたわけじゃないから」
明日香ちゃんは事前に調べてなかったのか、イベント内容が看板に書かれているのを指差した。
そこにはA級アイドルのライブ開催と、ナイトパレードのアイドル戦記の情報が記されている。暗闇の中でのサバイバル戦。優勝者には年間フリーパス券で、五位までには遊園地外にある店の豪華ディナー券が用意されているみたいだ。
「えっと……豪華ディナーで選んだわけ?」
年間フリーパスといっても、ここまで来るのに時間が掛かるし、そこまで魅力があるとは思えない。ライブが開催される以上、参加者はそのファンが多いのが予想され、厳しい戦いになるのも分かるはず。
「……そんなわけ……A級の実力を確かめるのもありだと思ったの!」
一瞬言葉に詰まったのは気になるけど、この先のイベントにA級だけでなく、S級アイドルのファン達と戦う可能性もあるはず。その実力の差を体験するのも必要なのは確かだ。




