勝負は何が起きるか分かりません ー9ー
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二試合当日 午後七時半
「装備不可だと……武器説明には万能と書いていたのに。くそっ! 五百円返せよ」
アリサ二乗との戦争準備前。オタ芸の動画を何度も見たし、只野さんの攻略本にはその操縦の仕方まで載っていた。万全の状態といっても過言じゃなかったのに、まさかのトレイターがペンライトナイフを装備出来ないなんて。武器説明じゃなく、機体の説明に小さく書いていた。
「カストルさんにコメントを送っても返事がないし、問答無用でしろって事なんだろうな」
カストルさんが乗る機体フェアレーターは近接型。トレイターと逆であるのなら射撃、遠距離武器が装備出来ないはず。つまり、トレイターがペンライトナイフを装備出来ない事も予想がつくはずなのに。それを知りながら、披露させるってカストルさんはドSに違いない。
今回の戦場は市街地A。高層ビルが多いアスファルトジャングル。トレイターやフェアレーター、量産型モブは全長二十メートルほどで、ビルより大きいとわけじゃない。飛行ユニットがあれば有利に進むみたいだけど、その装備を俺やカストルさんも持ってなかった。
それにアリサ二乗側の数が今回は八人と二十人には程遠い。この前みたいに肩透かしになるのが嫌で、参加人数が少ないのかもしれない。まぁ、こちらとしては好都合なわけだ。
『戦闘開始。 勝利条件 市街地中心にあるフラッグを戦艦に持ち帰る事。 戦艦は位置を固定』
今回は戦力差が少しという事でハンデは貰えないみたいだ。勝利条件もリーダー機破壊や、全滅とか以外にもあるというのはビックリだ。
「今回は相手も同時に出るって事は、あっちもオタ芸をするわけだな」
俺が乗るトレイターは市街地に降り立った。フェアレーターもちゃんと参加している。まずは二人でオタ芸をするんだけど、どのタイミングですればいいのか。明日香ちゃんの時は相手と同時にしてなかった。様子を見るにしても、ビル群にアリサ二乗側のオタ芸を確認する事が出来ない。
今回、オールマイトと安室さんが受け持つ番組に中継されるみたいだけど、その声が俺のところに届くわけでもない。それだと情報が筒抜になってしまうからだ。