夏イベントは海、祭、肝試し ー20ー
「あの……イベントが終わった後、帰宅するというのは」
電車やバスとかなら宿泊も仕方がない。けど、明日香ちゃんの親の車で、旅の始まりだから戻る事は可能なわけだ。少しでもお金を節約するためはありかと思う。
「却下! ルートを決めてると言ったでしょ。疲れを残したくないし、運転する夜野さんが可哀想。家に戻ると出直しみたいな感じがして嫌。旅を楽しみたいの!」
ふと口にしてしまった言葉に、明日香ちゃんは全力で拒否してきた。計画を白紙にしないと駄目だし、俺は免許を持ってないから、運転するのは夜野さん一人だけ。ナイトパレードが終わって自宅に帰るとなると、五、六時間掛かる。それから早朝に出発は気の毒かもしれない。
「私の事は気にせず。只野さんの両親に迷惑代として渡されてしまって……最悪車の中で寝るのもありですし」
夜野さんは所持金を心配してくれた発言だと思ったみたいで、自分のためだとは言いにくい。
「私も旅の資金は十分ある。なんなら、夜野氏の宿泊代は私が出そうか?」
フェイカーも戻る事には反対みたいだ。それに所持金は沢山あるみたいで、夜野さんの宿泊代を提供するとまで言い出す始末。それならヒッチハイクとかじゃなく、タクシーを使えば良かったとか、宿泊代は夜野さんだけなの? とは喉の部分で留まってくれた。
「多数決で宿泊で決まり! ネット検索とか電話で確認してみるから」
明日香ちゃんは旅行と言いながら、事前に宿泊場所は決めてない。俺が所々で宿泊施設が用意されてるから難しかったのかもしれないけど。
「あっ! ここが良いかも」
明日香ちゃんは俺達に確認もせず、勝手に連絡を取ってしまった。
「分かりました。それで構わないんで」
それも断れる事もなく、一軒目で成功した感じだ。夏休みで、夕方にもなるのに凄い事だと思うんだけど。
「部屋は一つしか空いてなくて、それも二人部屋だって。星野さんと夜野さんは車内でいいんだよね」
それで構わないと答えたのは、部屋を二つ取れなかった事。宿泊を渋った罰とでも言いたいのかも。それに夜野さんを巻き込んでしまったのは申し訳ない気がする。
「別の場所を探して……いや、私が車内に残ろうか? 星野氏と二人になるのも悪くない」
「それは駄目! 女子二人、男二人で分かれないと駄目なの!」
フェイカーの言葉に明日香ちゃんは反対した。これで別の宿を探してくれるのかもしれない。
「旅の始めに節約するのは良いかもしれません。私は車内で構いませんよ」
それを夜野さんがOKを出すもんだから、俺と夜野さんの車内での宿泊が決定してしまった。後々で金に困るのを避けるためと夜野さんが言うと、俺も従った方が良いと思うし。




