夏イベントは海、祭、肝試し ー19ー
「お兄と操縦とか考え方が似てたから。私はゲームでお兄の真似ばかりしてて……別に息を合わせたつもりはなかったの。モブを作るのはフェイカーさんの案で、半々に分けるのもそう。成功しなければ景品の代わりに自分が払うとかまで言うから……それがあの展開でしょ」
明日香ちゃんはフェイカーさんと息を合わせるつもりはなく、モブを作るというだけで自由に動いたみたいだ。それを考えるとフェイカーさんの操縦が異常という事になる。明日香ちゃんがフェイカーと只野さんが似てると思うのも無理はないと思う。俺達の呼び方だけじゃなく、明日香ちゃんが只野さんの操縦を模倣してるのなら尚更だ。
明日香ちゃんは気が合うというよりも、フェイカーさんが気になって、様子を窺うつもりなのかもしれない。
「それは……只野氏と一緒にゲームをした事があるから。アイドル戦記ではなく、別のゲームで何度も。コード名は同じで、アスカ嬢の兄だとは思わなかった」
「なるほど……実は只野さんとは違った形で会ってたわけですね」
一応納得したふりをしたけど、そんな簡単にコード名だけで判断出来ない事は分かってる。同じ名前を付ける人なんて、ネット世界で一人という可能性の方が少ないわけなんだから。
「良かった。旅は道連れ、世は情けと言いますからね。疑うのも必要かもしれませんが、一緒に行くのを決めたわけですからね」
夜野さんはホッとした顔をした。俺がフェイカーさんに質問した事で、嫌な雰囲気ならないかと気になってたのかもしれない。
「あの……そういうのじゃなくて、純粋に操縦が上手かったから。俺達の手助けになるわけですし、一緒に来てもらえるのは嬉しいですよ」
「私も気にしてない。一緒に連れて行ってくれるのだから、全力で協力するつもりだ」
フェイカーさんも夜野さんの言葉をフォローして、カレーを口に中に頬張った。
普通に食べる仕草なんだろうけど、そこでも気になった事があった。只野さんのスプーンの持ち方は握りしめるような形なんだけど、フェイカーさんもそれと同じ。明日香ちゃんもその握り方を一瞬見ていた。一つを気にすると、全部が気になるのは悪い事なんだろうけど。
「次の目的地は神森の遊園地、ナイトパレードなら、先に宿を探しとくべきだと思うのですが?」
夜野さんは宿探しを先にするよう、明日香ちゃんに提案した。夏にも入り、旅行者が増えるわけで、当日の宿探しには時間が掛かると心配してるみたいだ。車内で寝るのは明日香ちゃんやフェイカーさんも嫌がるだろうし。