夏イベントは海、祭、肝試し ー17ー
二機はスピードを上げながらも並走する。チュートリアルで操縦の仕方を覚えれるけど、明日香ちゃんのリベリオンに合わせれるだけでも、フェイカーさんは上手い方だと思う。
それでも問題はここから。明日香ちゃん一人だけで削るには時間が足りない。前の作品を見ても時間が足りずに中途半端になった作品もある。一人でやるとすれば尚更だ。それに一人が何もしなければ、誰かに文句を言われてもおかしくない。
だからといって、二人の作業も難しい。ランダムで組んだペアだと操縦技術が分からず、作品にすらなってないのもあるし、左右が別な物になってるのもある。
「おおっ!」
「同じ機体だから出来るの?」
「……綺麗」
観客達から明日香ちゃん達に感激の言葉が向けられた。それもそのはずで、俺でさえも驚愕するぐらいの出来事が起きた。
二機が氷にぶつかる直前に、左右へ分かれた。そこから左右対称の動きが展開される。攻撃のタイミング、旋回、上昇、降下、スピードさえも全てが同じ。
リベリオンとフェイカーが織り成すシンメトリーの動きが観客達を魅力する。氷の作品もそれに応じた形になっていく。
「……なるほどね。確かに量産型モブだ」
俺は二人の作品がモブだと認識した。他の観客達もそうだ。時間も十分以内で終わらせてる。
完璧に再現するといっても、明日香ちゃんは全身とまでは言ってない。それだと十分では全然足りない。だから、量産型モブを知ってる人なら誰もが分かる物を作ればいい。
リベリオンとフェイカーは氷で量産型モブの頭部を完璧に再現したわけだ。
完璧なら全身だと雪美大福は文句を言えたはずだけど、それをしなかったのは観客達がモブだと認めてしまったから。
アイドルにとってファンでなくとも、観客は大事な存在であり、敵に回すわけにはいかないからだろう。