夏イベントは海、祭、肝試し ー15ー
「勇者達よ、準備はOKかい? 僕は準備万全さ。カウントダウンを始めるよ」
今回のゴーグルなどは自動的に外れるような仕組みになっていて、ゲームオーバーの時点で取り外される形だ。それに開始はこっちからログインするのではなく、カリーの王子様が入るのと同時に戦場に突入するみたいだ。
それと相手の機体も前もって確認出来た。カリーの王子様は特別な機体じゃなく、量産型モブ。それも課金にものを言わせて、装甲を強化したのか鎧を着た感じで重量級になってる。武器が使えないのなら、肉弾戦となる。カリーの王子様は勝つ気満々の改造だ。
「三、二、一、いただきます!」
カリーの王子様はご飯を始める掛け声でスタートした。
宙から地上に降り立つ形だけど、今回は鍋の中であり、お湯の中にグツグツと煮込まれた巨大な具材が見える。足場となるのが、その具材という事だろう。
少しでも降下スピードを落として、具材の上に着地するのが必須条件だと思うんだけど、そんなの気にせず、むしろスピードを上げる機体があった。
それはカリーの王子様の機体だ。重さが違っても落下速度は変わらない。早く落ちても得する事はないはずなんだけど、カリーの王子様の狙いはそこじゃなかった。
スピードも乗った上に重量級の機体だから、具材の上に着地したけど、そのまま沈んでしまったのだ。それによって湯だったのが、カレーに変化した。カリーの王子様がルーだったわけだ。
しかも、一番先に熱湯風呂のリアクションを取る事で笑いも取っていた。素人に面白いリアクションをされると、プレッシャーになる事を考慮した結果だろう。
それに続いたのは豚と呼ばれてた人で、機体は水中専用機だあるホエール。クジラの形に似た機体で重量級である。鍋の中は水中かもしれないけど、入ったら敗北な時点でチョイスを間違ってる。それも降下スピードを落とすために、骨と呼ばれてた人の機体、天使型のヴァーチェを巻き込んでいた。
そんな形では具材に着地出来るわけもなく、二機ともドボン。
「二機が脱落。豚骨の出汁が来てもカレーの味は消えないぞ!」
カリーの王子様のギャグのつもりなのか、寒い言葉がマイクを通して聞こえてくる。ここまで流れが決まってるようにも思えて、やる気が削がれるのは俺だけなんだろうか。




