夏イベントは海、祭、肝試し ー13ー
「おおっ! 参加してくれて感謝。俺がカリーの王子様の男爵だ。君のおかげで筐体が余らなくて済んだよ。女性は当然として、子供やお年寄りも断ってたからね」
更衣室の中で歓迎してくれたのは焼けた肌に海パン一丁。それに豪華なマントに王冠を被った二十代の男性。手には杖ではなく、巨大なスプーンを持った、言うなれば現実の裸の王様。体もムキムキではなく、体をアピールするためにそんな姿をしてるわけでもない。
カリーの王子様ながらも名前は男爵なんて位はどうなんだとツッコミがあってもおかしくない。アイドルであっても、立ち位置はお笑い。アイドル芸人らしく、蒼さん達と同じB級。子供達に人気があるらしい。
「ど、どうも……よろしくお願いします」
カリーの王子様が自分から握手してくれるのは嬉しい事だけど、その後ろを見ると参加者の少なさが分かる。俺を含めても九人しかいない。しかも、カリーの王子様のファンはいなそうな感じで、景品に目が眩んだ人達って感じだ。
「あの……人数少ないようですけど、イベント的には大丈夫なんですか? つい最近こういうのを手伝った事があるんですけど」
カレーとアイスの屋台ばかりが目に入って、二人のグッズが売ってるのかも分からなかった。
それはこの間のゲームセンターのレースでも竹中かぐやとかポルックスさんのグッズは販売してなかったけど、参加人数は何十倍もあった気がする。
「大丈夫大丈夫、これはおまけみたいなのだからね。メインは屋台の方と雪美側のアート作品。俺の方は観客達に少しの笑いを提供出来たらいいのさ。あっ……俺だけじゃなく、君達と一緒にね」
少しの笑いを提供するって、機体を使って一発芸でもしろって言うのならハードルが高すぎる。しかも、徐々に観客が集まってきてるのか、声が聞こえてくる。窓から確認してみると雪美大福の方が多いけど、カリーの王子様のファンである子供達はこっちの方がいるみたいだ。
「少しの笑いって……内容は秘密になっていたんですけど、教えてもらってもいいですか? 海パン姿になるのも意味が分からないんですよ」
海パンに着替えるのもカリーの王子様の真似をさせるためだと若干引いてしまうし、レトルトカレー一年分がなければ参加を辞めてると思う。