夏イベントは海、祭、肝試し ー10ー
「まぁまぁ……初めてでもカストルさんみたいに上手いかもしれないから。それよりも……フェイカーさんはどうして川藤のイベントに行こうと思ったんですか? 同じ場所に行くのは偶然で、運命的だなんてね……」
天川織姫のファンになったから、協力してもらえるのは本当に助かる。けど、それとは話は別だ。明日香ちゃんは近場を選んだかもしれないけど、俺達が住んでる場所を掲示板に書いた事なんてない。アレクサンダーとの勝負もそこに住んでるかも分からないはず。
アイドルのイベントは他にも無数にあるわけで、同じ場所になるのは数パーセント以下かもしれない。
「なるほど……偶然としては出来過ぎか。私でも怪しいと思うな」
フェイカーさんは納得したように、俺の言葉に頷いてる。
「あの……失礼だと思ったのなら謝ります。けど、少しでも警戒する気持ちを無くしたいんで」
「いいよ。そこまでストレートに言われると、嫌な気持ちじゃなく、清々しい。川藤に向かうのは偶然一緒になったわけじゃない。そこを選んだ事は知ってたから」
「えっ! 私は親にも言ってない。夜野さんや星野さんにも伝えたばかりだし……って、あれ? 川本……あれ……何処かで会った事ある……どこだったかな」
明日香ちゃんは誰にも言ってないらしいんだけど、フェイカーさんの顔をジッと見始めた。
「……病院です。昨日、お兄に話してましたよね。それを聞いて、それこそ運命だと思ったんです」
「あっ! 分かった……けど」
誰か思い出したようで、怪しむよりも心配した顔になっている。
「明日香ちゃんの知り合いなの?」
「挨拶もした事ない。だって……お兄と同じで意識不明の状態で眠ってた人で、隣だったから……顔を見た事があったんだ」
それはつい最近まで眠ってたというだ。それなのに一緒に行動しても大丈夫なのか不安に思ったんだろう。フェイカーさんと只野さんを重ねたかもしれない。




