夏イベントは海、祭、肝試し ー7ー
「はぁ……それでいいですよ。で、今は何処に向かってるんですか? どんなイベントか情報があると助かるんだけど……勿論アイドル戦記関連だよね」
アイドル達が行うイベントにはアイドル戦記とは無関係なのもある。通常のストリートライブやサイン会、握手会など。大食い選手権みたいなものもあるけど、エンペラーの挑戦権を得られるとは思えないし、武器なども手に入れる事は出来ないと思う。
「川藤って街にあるママポートでアイスクリームとカレーフェスタがやってるみたいでね。ナビだと後三時間ぐらいで着くみたいだけど」
夜野さんが行き先を教えてくれるけど、アイドル戦記とは無縁な感じがするのは気のせいなんだろうか。俺は携帯でママポート川藤支店を検索してみると、『カリーの王子様と雪美大福がやってくる』と二つのイベントが同時に開催される事が書かれていて、ご当地カレーやアイスが集められる事も説明にある。後は他にもイベントが用意されてるとだけ。
「このフェスタで大丈夫なの?」
「確かにカリーの王子様とか雪美大福って愛称はね。色々と問題があると思うけど」
「仕事がカレーとアイスの仕事しか貰えないとか可哀想……じゃなくて! アイドルは来るみたいだけど、どんな勝負するとか見当がつかないし、本当にやるのかって事」
明日香ちゃんの言葉にノリツッコミを思わずしてしまったけど、カレーとアイスクリームで勝負が出来るわけがない。どちらかに付いて戦争なら大丈夫なのか。
「大丈夫。星野さんはどっちを選んでも構わないから。ここの所属開催のイベントは独特なんだって、お兄が言ってた事があるから」
ここを選んだのは只野さんの情報みたいだ。その内容を聞かされず、独特と言われたのなら気になるのは仕方ないか。
「あの……星野さん、只野さん。ヒッチハイクを求めてる人がいるようなんだけど」
夜野さんの言うとおり、ヒッチハイクを求めてる人がいた。その行き先が川藤となっているのに気付いたみたいだ。
車もその人の前で止まる事はなかった。夜野さんは助けたいと思って、少し車のスピードを緩めた。距離が近くになるにつれ、どんな人か見えてくる。眼鏡をかけた女性で、俺よりも少し年上な感じ。動きやすそうな服にリュックサックとヒッチハイクの旅でもしてるのか。
「……あの人……結構綺麗ですね」
俺はその人を見て、ポロっと口に出してしまった。好みとかじゃなく、普通にそう思ってしまっただけ。
「星野さんはあんなのが好みなの? デレデレされるのも嫌だし、助けるのはナシで。美人だから、別の人が助けてくれるよ」
この車は明日香ちゃんの親のだから、乗せるかどうかの権利は明日香ちゃんにあるわけだ。
「まぁ……只野さんがそう言うなら」
夜野さんも明日香ちゃんの言葉に従って、スピードを落としたのにも関わらず、その女性を通り過ぎようとした。
すると、その女性は紙を見せながら、横並びに走り始めた。一生懸命というよりも、逃がさないぞって感じが怖い。それは夜野さんも感じたとようで、車を止めてしまった。




