コンサート第一幕 ー34ー
☆
「なっ……何だ! 体が揺らされて……気持ち悪い」
「あっ! 大丈夫みたいですね。蒼先輩達、みんなが心配してる」
ライブ特別戦は終わりを迎え、俺は現実に戻る事が出来た。体が揺れていたのは、影幻さんが目を覚ますか確認するためだった。
「影幻さん……蒼先輩達という事は……みかんちゃんも無事だったんですね」
今回は目覚めたのは病院ではなく、ライブ会場であるドームであり、筐体の中だった。
「というか、何が意識不明になるよ。特別戦に参加したファン達も目を覚ましてたわよ。動いてる姿も確認出来たんだからね」
影幻さんの声で俺が目覚めたのが分かったのこ、少し離れて、蒼さんの姿があった。時間も特別戦が始まってから一時間も経ってない。
「あちらの戦争も私達の勝利で終わってます。体験に似ているのか、私が最初にやられて、次に影幻先輩、蒼先輩、夢椿先輩。残ったのは彦星さんとポルックス機だったんですが」
みかんちゃん達は撃破されると同時に現実に戻り、筐体から離れた。ライブ会場で流れる映像は本当に起きてる事と違うんだけど、展開は似ていたみたいだ。
「うん……俺達の勝ちで終わった。Pモブが助けてくれたんだ。けど、夢椿さんは俺を助けるために」
影幻さん、蒼さん、みかんちゃんがいる中で夢椿さんの姿はなかった。俺は三人に申し訳ない気持ちで一杯になった。
「何でそんな悲しい顔してるんですか? あっ……すみません。色々と迷惑かけたみたいなんですけど」
ポルックスさんも遅れて、俺に姿を見せた。最後まで残っていたんだから当然かもしれない。
「こいつ、本当か分からないけど、特別戦が始まったのと同時に気を失ったらしいのよ。あの時に話した記憶もないってさ」
「そのですね……特別戦が始まる前に用意された飲み物を飲むように指示されてまして……気付いた時には終わってた感じです……はい」
つまり、機体だけが中に入ったのか。会話をしたのも本人ではなく、別人。二機のポルックス機やあの世界の事を考えれば、蒼さん達も納得してる感じがある。
「……そうなんだ。いや、ポルックスさんが悪いとか思ってるんじゃなくて……あれ? 歌声が聞こえてくる」
特別戦が終わったところで、ライブ終了じゃないみたいだ。けど、ポルックスさん達四人がいるのに誰かの歌声が響いてくる。
「ああ……夢椿先輩が歌ってるの。一番活躍したのが夢椿先輩ってファン達が投票したみたい。それでアンコールの前のラスト曲が決まったから」
「何を驚いた顔をしてるわけ? 誰も意識不明になってないって言ったでしょ。まぁ……あんな事を体験したから仕方ないんだろうけど。最後はゆっくりと私達カシオペアの歌を聴きなさいよ。特別に貴方のために歌ってあげるわよ」
蒼さんがそう言うと、ポルックス達も頷いた。意識不明は嘘だったけど、俺の頑張りを認めてくれて、その感謝の気持ちみたいだ。
ファン達からアンコールの言葉が聞こえてくる。それに答えるためにカシオペアは再びステージに集まり、主題歌を歌う。
それを俺のために歌ってくれるなんて感動するしかない。そんなの中、裏ではスタッフ達の会話があった。それは一時的なバグが発生したらしい。アイドル戦記の特別戦が終わった直後。
特別戦に参加したファン達の表示が全て夢椿さんのファンに変わっていたらしい。アイドルの鞍替えするのは可能だけど、このタイミングで起こるとしたらバグしかないと判断したようだった。