コンサート第一幕 ー33ー
「流石というべきか……これでも駄目か」
偽ポルックス機は頭部とコクピット部分である胸を貫かれながらも、爆発する事もなく再起動しだした。それもPモブを破壊するためではなく、狙いはポルックス機。
Pモブは腕を引き抜く行動も出来ず、攻撃する余力も残っていない。ポルックス機に引き摺られていく形だ。
「あれで撃破扱いされないんですか! 誰も搭乗されてないから? こんなのどうしようも」
「いや……Pモブもそうだが、この機体も不安定な存在だ。同じ存在であれば爆発に巻き込める。貫いた腕から消失していくのも感じ取れる」
Pモブは片腕が爆破した事から、全体を爆破も出来るだろう。けど、消失を感じ取れるなら、時間の問題で済む。
「Pモブを破壊したら、只野さんはどうなるんですか? そのまま消えるなんて事は……生き残る事で目を覚ましたり」
「消える事はないが……まだ目を覚ますわけにはいかない。ここで意識を取り戻せば、夢椿嬢を助ける事も出来ないからな。それが出来れば……自力で目を覚ますよ」
只野さんはPモブを破壊する事で何の影響もないらしい。夢椿さんの事も考えてくれていた。それに只野さんを助けるために必要なエンペラーの撃破も嘘という事になる。
「信用しますからね。ちゃんと二人無事に帰ってきてくださいよ」
俺はPモブに向けて銃弾を全弾発射した。それによって半壊していたPモブは小さな爆発から、大きな爆発に変化した。その影響により、偽ポルックス機は爆発が連動したというよりも、その存在が幻だったかのように、爆風によって霧散していく。
「只野さんの思った通り、偽ポルックス機は倒したみたいだけど……」
本物のポルックスが残っている。偽ポルックスが消えた状態なら、倒しても問題ないんだろうか。それとも俺自身が自爆しないと駄目なのか。けど、この負けに何か影響があるのかも分からない。それを只野さんから聞くのを忘れてしまった。
そう思ってると、ポルックス機が残ってるのに、俺達の勝利したのが報告された。それはポルックスが味方機に戻っており、只野さんのPモブが敵機と入れ替わっていた。不安定な存在というのを只野さんは利用してくれたのかもしれない。
そして、竹中かぐやの予想に反して、只野さんの協力によって謎の戦闘は俺とカシオペアの勝利に終わった。




