コンサート第一幕 ー31ー
「すぐにでもリタイアしろと……そこまで冷静に行動出来るわけないじゃないですか!」
夢椿機は撃破されながらも、爆発せずにこの場に留まっていた。蒼機も自身の大剣で突き刺し、爆発した。この違いがあるのは意識不明と関係してる気がする。
ポルックス機は今度は俺の方に向いた。Pモブの事を考えると二対一、三対一。
そうなるはずが、ポルックス機の狙いは違った。こっちを向いたと思いきや、狙いはポルックス機のもう一機。仲間だったはずなのに、撃破されずにいたのをとどめを刺そうとしてる。
その行動をどう取るべきか。どちらが本当のポルックス機か。意識不明にさせるつもりでいるのなら、動けない方がそうなる。そんな風に考えれるようになったはずだけど、夢椿さんが倒された事でどうでも良くなった。同士討ちは大歓迎だと。
さらにPモブは俺を狙わず、動けないポルックス機を守る行動を取った。さっきも俺が撃破するのを邪魔した。
「星野氏、すまない。夢椿嬢を守れなかったのはこちらのミスだ。それは僕が何とか助け出せればいいのだが。今はポルックス嬢を守る事を優先してくれ」
そんな時、俺の機体に通信が入った。それは紛れもなく只野さんの声で、星野氏と呼ぶのも一人しかいない。しかも、Pモブの表示が仲間になっていた。
「……本当に只野さんなんですか? こんな場所にいるのもそうですけど、色々と説明してくださいよ。明日香ちゃんも心配してるんですよ」
「それは難しいのだ。今は不安定な存在でな。仲間になるのにも時間が掛かった。あちらも不安定な存在だ。彼女にポルックス嬢を撃破されるわけにはいかない。体を奪い、現実に出るつもりなのだ」
Pモブと偽ポルックス機では戦闘力は偽ポルックス機の方が上。俺が手伝いに行けば何とかなるかもしれない。
「全然理解出来ないですけど、アイツを倒すためなら協力しますよ。只野さんとは初めて一緒に戦えますね」
偽ポルックス機の事を彼女と呼んだり、ポルックスさんの体を奪うとか意味が分からない。けど、只野さんと会えた事と一緒に戦える嬉しさが、疑う気持ちや夢椿さんを守れなかった気持ちを一時的に消し去ってくれた。




