コンサート第一幕 ー28ー
「夢椿先輩、私に盾を出す必要はないです」
影幻機は移動出来なくなった。ポルックス機はとどめを刺すために距離を詰めてくる。スナイパーライフルには残弾が一発しかなかったのか、使い捨てた。
「何を言ってるんですか! このままだと撃破されて、意識不明になるかもしれないんですよ。俺が助けに行くから」
「……分かったわ」
影幻機を守るためには盾が二枚では無理だと本人、夢椿さんも分かってるはずなのに。移動も出来ないうえに、反撃出来る武器もない。このままだと意識不明になってしまう。
影幻機は真上に広範囲攻撃を打ち上げた。自身が狙われるのが分かってるからこそ、自爆に巻き込もうとしてるんだ。盾がなければ、防御するのは難しい。盾を出せば、逆に奪われてしまい、敵を守ってしまうかもしれないから。
その中を二機は別行動を取り、一機は影幻の方へ向かう。もう一機は蒼機の方へ。そのどちらがポルックス機なのかは分からなくなってる。
降り注ぐミサイルの雨、爆煙で状況が分からない。一発目が届いた時、影幻機とポルックス機には距離が少しだけあった。けど、逃げれる距離でもない。
それなのに影幻機は表示から消えたのに、敵機であるポルックス機は索敵に残ったまま。
爆煙が払われる中、確認出来たのは確かにポルックス機。影幻機がいた場所に立っていて、何かを上に掲げていた。それは何かの残骸。上半身だけが残った影幻機を盾代わりにしたのだ。




