コンサート第一幕 ー27ー
「彦星さん……何を」
みかん機の爆発によって、三人の魅了が解けたみたいだ。その光景は俺が攻撃した形で、裏切りに見えたのかもしれない。
「夢椿さんは盾を二枚ずつ出して、自身と蒼さん、影幻さんを守ってください。蒼さんと影幻さんもポルックスさんから離れて。彼女は敵になったんだ」
「はっ? 何をいきなり……ポルックスも何か言いなさい……よ」
蒼さんは突然の事で信じられないんだろう。もしかしたら、あの映像も俺にしか見えてなかったのかもしれない。それに未だ流れる『電脳世界』はポルックスさんの歌声が重なってる事に聴こえてない可能性も。
俺は銃弾を放つ。それは蒼機より前方。ポルックス機は次の標的を蒼機にしたからで、夢椿機の盾も間に合わなかったから。夢椿さんも俺の言葉に半信半疑だったのだろう。
ポルックス機はそれを難なく回避すると、今度は偽ポルックス機に隣接した。その動きは練習で見たポルックスさんの動きとは全くの別物。歌の効果でも性能がそこまで上昇するのかと思うぐらい。
「ポルックス機が索敵で敵機になってる。通信も繋がらない。残りの敵機は二つのポルックス機になるよね」
影幻さんも索敵で確認してくれたみたいだ。それに敵側となれば、通信も繋がらなくなるのも当然。
「ポルックスはあの偽物に操られてるわけ? 私達が攻撃出来ないように? ふざけんじゃないわよ! あっちが攻撃してきた以上、やってやるわ」
蒼さんは激怒した。ポルックス機は蒼機だけでなく、みかん機も撃破しようとした。それによって意識不明の状態になる可能性もあるわけだ。
ポルックスは否定したけど、自身が蒔いた種だと思われてもおかしくない。それほどに特別扱いされていたから。
ポルックス機と偽機体は前後交互に入れ替わりながら、こちらに仕掛けてきた。その速さにどちらが本物なのか分からないぐらいだ。
「俺達も一旦集まりましょう。離れていては各個撃破される可能性もあります」
機体性能で速さに突出してるのはポルックス機。その性能が向上されている以上、一人で戦うのは危険だ。しかも、今は二機が同時に動いてるとなれば尚更。救いがあるとすれば、二機が接近戦タイプで、夢椿機の盾も持ってない事だ。
けど、それは相手も分かってるのか簡単にはさせてくれない。見落としてる部分があった。双剣が固定武器で、接近戦タイプという思い込み。装備が出来ないわけじゃなかった。落ちていた武器、みかんちゃんのスナイパーライフルを奪い取っていて、交互の動きで見えなくしていた。
それを使用する事によって、夢椿さんの防御のタイミングも合わず、影幻機の下半身部分が大破してしまった。




