勝負は何が起きるか分かりません ー6ー
「ストップ! 明日の作戦会議をするから、明日香は部屋に戻るように。星野氏は誰にも告げ口などしない男だ。僕が保証する」
明日香ちゃんは俺の手を握ろうとする素振りをみせたけど、只野さんが俺の目の前に立ち塞がり、それを阻止した。ファンでもないのに、簡単に握手はさせたくないかもしれない。それともシスコンだからなのか。
「そんなの……えっと……星野さんとここですればいいでしょ」
明日香ちゃんは只野さんが俺の名前を呼んでいたから覚えてくれたみたいだ。しかも、一緒に作戦会議をしようとも言ってきた。もしかしたら、明日香ちゃんは俺を勧誘したいのか。握手しようとしたのも布石だったのかも。
「それはナッシング! きっと天川織姫の対戦相手も決まっているはず。こっちのやり方とは違っているからな」
「えっ? 星野さんの推しは天川織姫なの。という事は誤爆した機体に乗ってたのって」
「……俺です。下手くそですみません」
俺は素直に答えると、明日香ちゃんは悩んだ顔をしながら、只野さんの部屋から出ていってしまった。
「僕が家に誘った事で、星野氏が上手いと思ったんだろう。だが、実際はポンコツだった。それでも注目される機体でもあるからな。引き込むか悩んでるんだ。星野氏は今のうちに逃げるべきだな」
そんな言葉を聞くと、明日香ちゃんが礼儀正しかったりしたのは計算してるみたいに思ってしまう。本当はどういう性格なのか全然掴めない。
「只野さんがそう言うなら。そういえば、何で俺を家に誘ったんです? 西園寺アスカの正体が誰なのか知ってしまったわけですし」
只野さんは俺を西園寺アスカのファンに引き込む素振りもないし、自慢するような事もしなかった。正体を教えるメリットが何もない。
「星野氏との仲を深めようとした……というのは冗談で、それはトップシークレット」
只野さんはシスコンだけでなく、両刀使いのような口振りはやめて欲しい。トップシークレットというのが男も好きみたいな事だったら嫌なんだけど。