勝負は何が起きるか分かりません ー5ー
「……ははは。そのアイドルに似てるんですか? けど、人違いですよ」
明日香は片言で否定してきたけど、俺はアイドルって一言も言ってない。まぁ、只野さんの妹だから、好きなアイドルの名前を知っていてもおかしくない。
「本人だよ。僕はマイシスターと説明しただろ。西園寺アスカは芸名だ。本名は只野明日香」
「ちょっと、お兄! 納得してくれそうな顔してたのに、何で教えるのよ。イメージが大切なのは知ってるでしょ」
明日香ちゃんの慌てようから、只野さんの言葉が事実だと分かった。天川織姫みたいに、意外と近くにアイドルの子がいるんだと思ってしまう。
「安心しろ。星野氏は明日香のファンじゃない。イメージが崩れても問題ないはずだ。僕はアイドルのアスカも好きだが、本来の明日香も好きだからな」
只野さんはアイドルが好きというわけじゃなく、ただのシスコンのようだ。こんな事を言われて嬉しいと思うなら、明日香ちゃんもブラコンとなるんだけど。
「そうなんだ? 私のファンじゃないのなら……って、その方が駄目でしょ! 戦艦も爆破されてないのにスキャンダル発覚したようなものじゃない。私としてはお兄に好かれようと嫌われようと問題ないわけ」
「あの……誰かに告げ口なんてするつもりはないですよ」
「……本当ですか? 私とは別に好きなアイドルがいるんですよね」
明日香ちゃんは兄を心配する一面があったけど、ブラコンじゃなさそうだ。しかも、只野さんに対する態度は別として、西園寺アスカというキャラとは違って礼儀正しい。