コンサート第一幕 ー10ー
「……違うでしょうね。私達が離れた後、作戦会議をしたとも思えません。したとしても、蒼がそれに従うかどうか。彼女には他とは違い、B級のプライドがありますから」
それはポルックスさん達三人が作戦を考えた場合だ。逆に蒼さんが作戦を考えたとしても、練習にも不真面目な人の指示をみかんちゃんや影幻さんが従うとは思えない。
夢椿さんという仲介役といえばいいのか、まとめ役がいない状態では各自に動くしかない。
ポルックス機も蒼機を撃破されないため、突撃を開始した。
みかん機と影幻機も移動はするものの、一定の距離を保っている。それが攻撃範囲内という事なんだろう。
「夢椿さんの機体は何枚の盾を操作出来るんですか?」
「六つです。すぐに発射出来ますが、みかん機の狙撃と影幻機の広範囲攻撃を警戒するためですか」
「それは大丈夫。みんなはまだ操縦になれてないんですよね」
そう思ったのは、みかん機が狙撃のために移動を始めた事。こちらからでは攻撃は届かないのに移動したのは蒼機やポルックス機に当たる可能性を考慮したため。さらに言えば影幻機は広範囲攻撃。本当の集団戦では部隊を分裂されたり出来るんだろうけど、少数の場合は難しい。仲間まで巻き込む形になり、操縦に慣れてない蒼機やポルックス機では避けれるとは思えない。
この中に夢椿機がいれば話は変わってたんだろう。広範囲攻撃や突撃するのも、夢椿機の盾が防御してくれるわけなんだから。
「まずは……みかん機の位置を確認。直接攻撃だから、盾で防ぎやすいはずだから。影幻機の攻撃は上を警戒。怖いなら、盾を二枚使ってもいいかも」
俺が機体の特性を考えて指示するなんて、自分でも成長した気がしてくる。というか、カストルさんならこうするかもと勝手に思い浮かんだ事を言ってるだけ。それと固定観念に囚われない事も何かしそう。
「残り三枚の盾は彦星さんを守るために使えばいいのでしょうか?」
「えっ……と、盾の操作は味方に向けてだけなんですかね? この位置に置いて欲しいとか」
「問題があるとすれば距離だけですけど、どうするつもりなんですか?」
「なら、蒼機とポルックス機の前に」
俺は後退しながら、射撃で蒼機とポルックス機を攻撃。それも撃破するためではなく、防御や回避出来るぐらいに。
蒼機は大剣を盾代わりに意地でも距離を詰めようとして、スピードのあるポルックス機は回避しながら、接近するタイミングを待っている。
二人は夢椿機ではなく、俺の攻撃だけを警戒している。夢椿機が攻撃手段を持ってないと思ってるから当然だ。まぁ、防御の要を狙うべきなんだけど、俺が立ち塞がってる形だ。
「えっ……あっ! 視界を塞ぐわけですね」
相手を守るためではなく、盾で目の前を塞ぐ。その隙に攻撃を当てるんだと夢椿さんは思ったみたいだ。
「いや……それもあるけど、攻撃手段になるかなって。移動してる中で盾が目の前に現れたら、避けれないと思うんだよね。それが出来たとしても、動きを遅らせる事が可能なわけだし」
夢椿機は剣や銃など持たなくても、使いようによっては盾でも武器、障害物へと変える事が出来るわけだ。




