コンサート第一幕 ー5ー
「いや……言い出すタイミングが難しくてね。夢椿がいてくれると本当に助かるよ。ポルックスも練習を止めてくれ」
四人が練習を中断したけど、一人で続けている。雑音が聴こえないほど集中してるみたいで、夢椿さんが肩を添えた事でようやく気付いたみたいだ。
「えっ……何ですか? あっ!」
ポルックスさんは俺に気付いたみたいで、謝る素振りを見せた。一応は悪いと思ってるんだろう。
「ポルックスの方が彼を知ってるから、紹介してやってくれないかな」
「は〜い」
ポルックスさんは俺の隣に立って、他の四人に紹介した。
「えっと……今回の主人公機を操縦してもらう星野さん。天川織姫さんのファンで、トレイターの操縦者。竹中かぐや先輩のファンであるアレキサンダーと良い勝負もした人だから、良い腕だと思います」
「ど、どうも……星野というよりも……彦星で。迷惑掛けないぐらいに頑張ります」
「ふ〜ん……どこにでも普通な奴冴えない男。オタクってこんな奴ばかり。まぁ、表舞台に出ないから許してあげるんだけど」
蒼さんは明日香ちゃんみたいにアイドルだからってわけじゃなく、目の前に本人がいるのに素で言ってるのが分かる。
「それは酷くないですか。こっちが頼んでる方なんですよ。見た目が悪くても、本人の前に言って、やる気を無くしたらどうするんですか?」
みかんちゃんは蒼さんに反抗したいのか、俺を庇うみたいな事を言うけど、俺が格好悪い事を認めてるように聞こえてくるんだけど。
「何もフォローになってないし。彼の顔がひきつってるけど」
影幻さんはジッとこっちを観察するように見てくる。何か弱味でも探されてる感じだ。
「すみません。協力してもらうのはこちらの方なのに。私は夢椿、順に影幻、みかん、蒼です。今回はよろしくお願いします」
夢椿さんは流石年の功というべきなのか礼儀正しい。俺が名前を当然知ってるんだと思う三人に対して、夢椿さんだけが名前を告げ、順番に紹介してくれた。
「手伝うのなら、名前を知っていて当然だと思うけど。それで……ここに来てもらったって事は一緒に練習するわけ。リハーサルとか他にやる事は多いんだけど」
「勿論ですよ。アイドル戦記で踊れるだけじゃなく、戦闘もしないと駄目なんですからね。そうじゃないと人数が少ない分、負ける可能性が高いから」
蒼さんの意見に、ポルックスさんが言い返す。さっきオタクみたいな事と蒼さんが言ってたのは、機体を操縦して踊る事がオタ芸みたいだと思ったからだろう。それと同時に歌ったりするかもしれない。
「そうね。ライブの練習は大事だけど、アイドル戦記の重要性は蒼も分かってるでしょ。彼の戦い方を学ぶのは今後にも繋がると思うけど。みかんも影幻もそう。ファン達にアドバイスが出来れば、喜ぶかもしれない」
「夢椿先輩が言うなら……踊りじゃなく、戦闘ですよね。一対五で戦ってみるとか?」
みかんちゃんは賛成し、影幻さんも頷いている。蒼さんはそっぽを向きながら、多数決で決まったのなら仕方ないような顔をしてる。