コンサート第一幕 ー4ー
「ここです。今は練習してるはず」
マネージャーが案内したのはライブの舞台じゃなく、控え室でもない。会議室のような場所で、ノックした後、すぐにドアを開けた。そこにはカシオペアのメンバー五人が衣装ではなく、ジャージ姿で練習をしていた。
「はぁ……面倒くさっ……普通に踊って、歌うだけで十分なのに。オタク達の真似みたいな事しないと駄目なのよ」
「ちょっと! 真面目にやってくださいよ。新規ファンを獲得出来るかもしれないんだから。私は少しでも早く昇級したいんです」
彼女達がやっていた練習は、歌合わせとかじゃなく、アイドル戦記。筐体が五つ用意されていて、全員が操縦の練習をしていたみたいだ。
その練習も始めたばかりだから上手くいってない。アイドルにもやる気の温度差が違ってるみたいだ。
「別に失敗しても構わないと思いますけど。アニメの役柄的に私と影幻さんはね。一番年下と独特なキャラだから」
練習を中断したのか、彼女達は次々とゴーグルを外し、言い争いが勃発しようとしてる。級も違うし、即席のグループだから仕方ないかもしれないけど、リアルでこんな場面を見てしまうなんて。
最初に文句を言ったのは蒼。B級アイドルで、アニメではカシオペア内のライバル的存在。何でも完璧を求めるキャラを演じる。
それに反抗したのはC級の二人、みかんと影幻。みかんが演じるのはマスコット的な最年少14歳の少女。影幻さんは異質なキャラで、腸が飛び出た熊のぬいぐるみを常に持ち、謎の術にはまってるって感じだ。
確かに完璧を求めるキャラが、全員と動きがあってないのを見るとアニメファン的には興醒めするかも。声とキャラが合ってないのも嫌だと思ったりもするけど、やる気が見えないのは、プロとしても一番最悪だ。
「お客様の目の前で、こういうのを見せては駄目よ。ノックだけでは聴こえない可能性もあるのだから、貴方もすぐに止めてもらわないと。素の場面なんて見られたくはありませんから」
落ち着いた感じで三人を戒め、マネージャーにも注意したのはB級の夢椿。アニメだけでなく、このメンバー内でも最年長の二十五。グループを取りまとめる役柄だ。