コード『ガンナー』起動 ー11ー
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俺が目を覚まして検査をしてみると、明日に退院する事が決まった。それは良かったんだけど、問題がある。それは治療、入院費だ。そんなお金は持ち合わせてなかったんだけど、すでに支払われていた。俺の両親が払ったわけじゃなく、明日香ちゃんの親でもない。俺だけじゃなく、明日香ちゃんの分も一緒だったらしい。それもどんな人物かも教えてくれなかった。
「はぁ……払わずに済んだのは良かったけど、何だか損した気分だ」
俺は暇潰しに病院を散策する事にした。携帯で掲示板とかの確認するのもありだったけど、電池が無くなってて、充電器もなく、簡易のやつを買うのも勿体ないから。
損した気分というのは別にバイト時間が減ったからじゃない。眠ってたつもりはないけど、十分の睡眠はとれてたみたいで体が軽い。店長や夜野さんも見舞いに来てくれたみたいで、置き手紙と果物があったみたいだ。あったみたいだというのも、果物が無くなってたから。きっと、食べたのはカストルさんだろう。
それも損した気分になったけど、一番じゃない。散策もある意味、少しの可能性に賭けてる。
「カストルさんとか俺に言ってきそうなんだけど」
見舞い品に花も飾ってあった。近くに置き手紙があったんだけど、店長や夜野とは別にもう一枚。それを開けてみるとそこには治療費を払ってくれた事や、体を心配する言葉が書かれていて、差出人の名前が天川織姫になっていた。あの世界に歌声が届いたのなら、こういう事態になるのが分かっていたのかもしれない。
一番損したと思うのは、天川織姫に再会出来なかった事。しかも、側にいてくれたのに目を覚まさなかったのが本当に悔やまれる。だから、今日もいないかを見て回る事にしたわけだ。