只野救出作戦 ー15ー
「あっ……トレイターが今更ながら反撃を開始してますよ。ゴール直前での悪あがきなのかな? けど、トラップも無効化するほどだから効果があるとは思えないけど」
俺は避けながらも反撃を開始する。その行動に意味がないような事を新人アイドルは言葉にしてるけど、そう言ってくれるのは好都合。狙って撃ってるわけじゃなく、相手に防御姿勢を取らせないため。
「無駄な足掻きだを……丁度ゴール前だ。ギブアップが嫌なら、華々しく散ってもらおうか」
俺はイスカンダルの言葉を無視して、大砲の状態を確認する。狙うのは使えるのが最後の一つとなった時。標準を合わせやすいのもそうだけど、ここまでくれば警戒も薄くなるから。
「三……二……一」
最初は爆発音とか気になったりしたけど、今はアレクサンダーの大砲のセットする音を確認出来るまで冷静になれてる。普通の機体では聞こえなかったかもしれないけど、十倍の大きさとなれば別だ。それも大砲の数が減っていくごとにタイミングを取りやすくなる。
「三……二……一……ここだ!」
最後のアレクサンダーの右肩部分の大砲の弾が発射する直前、他の攻撃をダミーにして、そこだけに標準を合わせてミサイルを発射した。その攻撃によってアレクサンダーの右腕は爆発によって外れた。
「えっ、えっ、えっ、え〜! ここにきて無敵かと思われたアレクサンダーに、トレイターの攻撃が成功しましたよ。けど、どうやったんでしょう? トレイターの攻撃で右腕を破壊出来るなんて思えないんだけど」
「アレクサンダーの攻撃、大砲を利用したんです。アレクサンダーは大砲の暴発を恐れて、適度に爆風によって大砲の中に入ってくる瓦礫を取り除いていました。その行動をトレイターは見逃さなかったんでしょうね」
アレクサンダーが反撃を受けた事に新人アイドルの驚いたのに対し、竹中かぐやは冷静に分析して答えた。
そして、攻撃が成功した事に観客の盛り上がりは最高潮になった。トレイターの逆転劇を期待する声。
「ふざけるな! 先程のような攻撃は二度と通じない。万に勝てる要素などあるはずがない。それを証明してやる」
けど、観客達の声やイスカンダルの怒声を無視して、レースは終了してしまった。アレクサンダーは前進を止めなかった事でゴール地点に着いてしまったのだ。