微妙な三角の関係
ユキオの気持ちを思うと不安になる私。
私は思わずため息をついた。まるで映画俳優みたいな人。明るい金髪が青い目を覆うようにかかっている。柔らかく微笑んだ形のいい口元。綺麗な鼻筋。
・・・でも?
私はその茜に似た瞳を凝視した。その瞳に宿る厭世的な光を見逃さなかった。
「モーリッツよ」
薔薇色に頬を染めて茜は言った。
定期入れに入れて持ち歩いてるなんて?
茜はこの従兄が大好きなのだ。
「ねえ山科さん」
少しイライラした様子でユキオが割って入った。私たち二人のやりとりが面白くないみたいだった。
「僕らの部活に入らないか。生物部なんだけど部員が少ないんだ」
「生物部?」
茜は目を丸くして横の私を見た。
「文芸部に入ろうと思ってたんだけど・・でもいいよ」
「そう?」
ユキオは嬉しそうに顔を輝かせた。クールなユキオがそんな表情を見せるのは珍しい。よかったな、と私に笑いかけたので無理に笑顔を作った。
「山科さんが来てくれれば部員がきっと増える」
「やだそんなことないよぉ」
「あるでしょ」
テーブルで両腕を組んだユキオはほら、という風に首を回す。さっきからちらちらと他のテーブルの男子生徒たちがこちらに視線を送ってきていた。
「転校生が珍しいんだね」
「それだけじゃないよぉ」
苦笑気味に私は茜に言った。
「でも高校での転入は難しいって聞いたけど。前の高校のレベルが高かったんだね」
探るような目になってユキオは言う。
「どうかなあ」
ユキオは眉を寄せた。
二学期最初のテストはユキオが学年トップだった。私がたまにユキオを抜くこともあるがユキオは学年トップであることに自信を持っていたのだ。茜がどれくらいの成績保持者であるのかユキオは関心を持っていた。
ところが意外に早くその情報は担任の蓮池先生からもたらされることになる。先生は私とユキオに山科茜の成績を告げて笑ったのだ。
「地元トップ負けんなよ」
ユキオのプライドに火が付いた。私が恐れていたユキオの茜への恋心は対抗心に変わり燃え上がった。最強のライバル山科茜。外されそうだった私の立ち位置は温存された。微妙につり合いながら私たち仲良し三人組は形成されていったのだ。
「それじゃあ放課後生物室に来てくれよ」
箸を置くとユキオは言った。
まだ続きます!