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赤と白のために  作者: 田浦青花
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奇妙な転校生

だんだんに山科茜がわかってくると同時に謎は深まってくる

「山科さんを生物部に入れない?」

「え?」

ユキオの提案に私は驚いた。

「だってさ。幽霊部員ばっかりで活動してんのは僕らだけだろ?一年はマジマがふらふら来るだけだし・・入ってくれれば助かるじゃないか」

「まあそうだね」

部長のユキオが言うんなら別に異論はないけど勧誘にはいつも面倒くさげなユキオだったのに・・

「今日のことが気まぐれでなければね」

今日のことは奇跡なんだ。そう思った。明日も茜が私と話すとは思えない。きっと他の同級生が自分のグループに茜を入れようとやっきになる。茜と話したことはすごく嬉しかったけど私はユキオと二人きりでやってきたんだ。・・だから別にそれでいい。私は暗くなった空に目をやった。

ユキオには今日のことは言わないでおこう・・。私は今日見た映像のことは自分の胸にしまい込んだ。

 けれど次の日学校に行くと茜が華やかな笑顔で私の所へやって来た。他の同級生は明らかに不満そうで、高田ちやという女子グループのリーダー格の生徒が外れ者の私から茜を引っ張った。でも茜はあっけらかんとして意に介さなかった。昼休みも他の友達を断って私達をお昼に誘った。

やれやれ、変人が一人増えたってこと?

ちや達は仲間内でこそこそと囁きあった。

うちの学校には学食があったからユキオと茜は日替わりメニューの定食を注文した。いつもならユキオは売店でパンを買ってお弁当のある私と外で食べる。でも今日は茜に付き合った。私は茜の隣でテーブルにお弁当を広げた。

「食堂がある高校で助かった」

茜はご飯を口に運びながら向かいに座ったユキオに笑った。

「私食欲はガッツリあるんだ」

それからいつもここで食べてるの?とユキオに訊ねた。

「いや。いつもはパンを買ってミノと外で食べてる。母親が家にいるときはお弁当なんだけど今はいないから」

「え?お母さんどこか行ってるの」

茜は目を丸くした。

「うちは両親ともピアニストだから。だいたいどちらかは演奏旅行にいってる。2人が家にいる時なんて七夕なみだ」

「へえ~」

茜は感心した顔になった。

「・・・でもそういうのもいいね」

私は急に虚ろな表情になった茜が心配になった。

「・・茜のお母さんは・・?」

びくりと茜の肩が動いた。私は途中で言葉を止めた。

「うちのお父さんは裁判官なんだ」

裁判官・・。

私の箸は止まった。

「ちょっとしたトラブルがあってね。前いたところからこっちの裁判所に移ったの」

「判事なんてすごいね」

ユキオが感心したように言う。

「そんなことないよ。一つの処にいられない仕事なの。人の目ばかり気にして。・・だからずっと転勤ばかり。家族は大変」

茜は悲し気に目を伏せた。長いまつ毛が目尻に触れそうだ。思わず見入ってしまう美しさだった。私はユキオを見た。いつにない熱を込めた目で茜を見ているユキオを。

―ユキオの隣にいられる時間はもうさほどないかもしれない。

悲しい予感に私は深く息を吸った。

その時茜の、その魅了する瞳に青い光が揺らいでいるように見えた。まるでほの暗い湖底のようだった。そういえば茜の目は光加減で時々不思議な色に見える。私は一つの“謎”を解きたくなった。

「ねえ茜さん」

私は言った。

「なんで私に興味を持ってくれたの」

「美野って呼んでもいい?」

そう言われ私はうつむいてうん、と頷いた。

「じゃあ私を茜って呼んでね」

「わかった」

小さい声で私は言った。茜は微笑んだ。

「おんなじなんだもの」

「え?」

私は顔を上げた。きょとんと茜を見た。一体私と茜になんの共通点があるというのだ。容姿端麗の、判事の娘の、都会人の、茜に。この田舎から多分一生出られない、不細工な私と。

「美野はクオーターなんだよね」

「うん」

「だからおんなじ」

楽し気な茜に戻っていた。

「だって私のおばあさんはドイツ人なんだもの」

びっくりしている私たちを見て茜はふふふ、と笑った。

「そうだよね。私髪真っ黒だし小っちゃいし。」

それからピンク色のパスケースから一枚の写真を取り出して私に見せた。

「従兄なの」

そこには金髪の美青年が映っていた。



なかなか進みませんが書き続けるよう頑張ります!

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