第一章 日常の終わり
「んじゃあいってくるわー」
俺は誰もいない家に挨拶を一方的に言い、学校へと足を進めた。空模様は酷く
今にも雨が降りそうな、そんな天気だ。
学校へと通じる大通りに合流する。そこは通学路だから学校へ登校する生徒で
溢れ返っている。そして、こんな空模様なのにも関わらず、アホみたいに笑い、
バカみたいにはしゃぐ生徒たち。正直『ウゼェ』
大通りを外れ、路地裏を歩いて学校へ向かう。あんなとこにいたら吐きそうになってしまう。俺は今、ものすごく腹が立っていた。だがこれは、日常茶飯事
だ。大通りを少し歩かなければ路地裏の道へ行けないからだ。
路地裏はこの世で一番好きな場所かもしれない。なぜかというと、路地裏に入
ると、生徒の会話や声、街行く人の会話や声、それらの類、俺が最も嫌うそんな
ものたちの綻ぶ顔そんなものから完全に遮断された場所だからだ。
ただ俺は歩く。何も考えず、何も思わず、ただ歩く。
「ん?」
つい声に出してしまった。
その反応は仕方なかっただろう。正解だっただろう。
美しい白髪を靡かせ、初々しく、ぎこちなく制服を身に纏う一人の少女がカバ
ンを抱きかかえ肩をすくめて立っていた。本来こんな暗く埃っぽい路地裏に、い
たいけな少女一人でいることが自然ではなく不自然だった。
故にさっきのような反応をしてしまった。
俺は気にせず前進する。路地裏は静かであることから、地面に靴を着くコツ、
コツ、コツ、という音が4分の3拍子程度で響き渡る。
「…………」
俺は自然的に足を止めてしまった。その行動は仕方なかったと思う。なぜなら
少女は涙ぐんだ目でこちらを見ている。
俺は少女の行動に構わずまた歩き出す。距離はもう少女の距離は4~5mとい
ったところだろう。
少女との距離はだんだん縮まっていく。
そして、少女の横を何気ない顔で通り過ぎていく。
「んッ!!」
背中に違和感を感じた。思わず足を止める。そして考える。
今この状況で俺の前進を阻むことができるのは、あの少女しかいない。なぜな
ら此処には、少女と俺、しかいないからだ。もしかしたら猫かもしれない。だが
、まずないだろう。あらゆる場面を考察したが、この位置、シチュエーションそ
して少女と俺しかいないということから原因は100%少女だろう。
ゆっくりと後ろに振り返る。
「……」
やはり可愛いな。とおもってしまった。彼女は目に涙を浮かべている。遠くか
らだと涙目にっていると勘違いしていたがぼろぼろと涙を流している。
「はぁー。…どうしたんだ?」
同じ学校の奴と話すのはいつぶりだろう。と考えるくらい人との接触がないた
め話しかけることすらメンドくさくなっていた。
「…」
少女はズッズズッ、と鼻水を吸うだけで何も言わない。
「おい。聞いてんの?」
少しキツめに言う。
「…」
返答なし。
「おい!!。頼むよー何か言ってくれー。言わないと分かんないだろ!」
つい、腹が立ってしまい少女に怒鳴ってしまった。長いこと人と話してない
ためこのような不動作を起こしてしまった。路地裏に俺の言葉が響き渡りリピー
トする。
「………あぁ」
もう今にも泣き叫びそうな勢いだった。
「あーもう、悪かった悪かった。でも言わないと分からないだろう?」
まるで我が子をあやすように、頭をなでながら言い聞かせる。目を何回も手で
擦っている。
「で、どうして泣いているんだ?」
少女は目を擦った後、俺を上目遣いで見つめる。可愛すぎるんだが…
「迷子になっちゃったんです…」
少女は甘く透き通るような声で質問に答える。
「なるほどな」
確かにこの路地裏は入り組んでいて、道を知る者いがいでは到底ゴールには辿
り着く事はできないだろう。
「はい……私、今日転入してきたんです。だから道もよく分からなくて…」
見るからにこの少女も人との接触がすくないらしい。返答や会話のしかた、そ
してアイコンタクトが取れていない事から一目瞭然だ。万一男が苦手ということ
もありえるが、そんな輩はもっと過剰に男を避けるだろう。
「なるほどねー。何組?」
「えーー…2組です!」
忘れていて急に思い出したかのように腰に片手をあてもう一方の片手の人差し
指をピンと立て、俺の顔の前に差し出して言う。
「え……」
よく考えてみると俺も2組の生徒だ。脳の回転速度が落ちるのを体で感じる。
急に体の力が抜け視界が眩む。
「学校…楽しみか?」
少し声を震わせながらに問う。
「…はい!!」
心配そうな顔をした後少女は元気いっぱいに両手を懐に引き寄せ言う。そして
胸が揺れる。
「その感情は此処に捨てていけ。」
俺は現実を少女に押し付けた。俺は間違っていないはずだ。彼女が失望し、
絶望するのなら今ここで言うのが最善だ。
「え?……」
彼女はとても理解できないような顔をしている。
「今説明している暇はない。とにかく学校へ急ごう。」
少女の手を引き学校への道に案内する。
彼女は会ったときの表情に戻ってしまった。
とても静かで、なんの会話もなく、時は過ぎ去った。
やっと学校前に出られる出口に着いた。もう学校は見えている。
少女の吐息がかかるぐらいの位置まで顔を近ずけて言う。
「ここからは時間をずらして学校に向かう。分かったな。」
彼女は顔を赤く染め小さくうなずく。
「がんばれよ」
俺はそんな言葉をその場に残し、先に学校へと向かった。
教育機関守備特殊部隊本部にて――――――
「怪奇物種が出現しました!!」
「なに?!数は!」
複数のモニターに何人もの作業員達総勢50人がヘッドセットをしたまま口々
に発言する。
「10、20、…30体を超えています!!」
発言した作業員は冷や汗をかきながらモニターを見直す。
「バカな……なぜそんなに大量発生したんだ!!」
その場の最高指令も机を殴り現状を悔やむ。
「近くの学校はどこだ!!」
「私立上川高等学校です。」
「その学校の隊員数は!!」
「8名です……」
その言葉に一同が静まり返り、硬直した。
「応援隊員を行かせるのにどのくらいかかる……」
「約1時間はかかるかと…」
「早急、応援隊員を出動!!……あとはあの子達を信じよう……」
最高司令官は肩を落とし床に崩れ落ちる。
ちくしょー。また糞みたいな一日が始まるな……
俺は二組の教室の前で立ち止まる。大方教室の中の様子は目に見えている。
俺はふと思い出す。
「えーー…2組です!」
こう言った時の彼女はとても輝いていた。青春を謳歌できると…
立ち止まっていても意味がない。
よし!と自分に言い聞かせるる。行くか。
「んッ!!」
どこかで身に覚えがある感覚、なんだか引っ張られる感覚。俺は勢いよく振り
返る。
背筋が凍った。なぜか、なんて言うまでもない。なんせそこにはあの少女が俺
の服を引っ張っていたからだ。
「結局登校時間一緒になりましたね。」
少女は微笑みながら俺に言う。
なんて事やってくれたんだ!俺の心は乱れた。
「……」
何も言えなかった。言葉が出なかった。
「さぁ行きましょ。」
少女は楽しそうに教室のドアを開ける。
その瞬間、俺と少女の青春は終焉を迎えた。いや、俺ではなく少女の青春が、
消え去った。
その理由としては、俺の席、荒城四季のイスには画鋲が上向きにに置かれ、机
には暴言が油性マジックでびっしり書いている。そして、机の中にはクラスメイ
トが昼食に食べたであろうゴミがぱんぱんに入っている。どれもボロボロで教室
の中で一番目立っている。
そう、俺はいじめられている。だが死のうとは思わなかった。
そんな俺の席の状態を見て少女は口をぽかんと開け唖然と立ち尽くしている。
少女はさておき自分の席へ向かった。
そして一番俺が恐れた事に直面する。
「ねぇ。その子お前の彼女?」
やはりこうなるか。だから一緒に登校するのは避けてたのに。
「ちが!!うはぁッ」
「おまえは黙ってろ!クズ!この可愛い子ちゃんに聞いてんだよ。」
俺をいじめる中心核的存在の野郎にイスを投げつけられる。
「おまえはシャワーでも浴びろ。」
部下のような存在の奴らにゴミ箱のゴミを浴びせられる。
むちゃくちゃ腹が立つ。殴りてー。殴りてー。殺してー。殺してー…
だが俺は我慢しなくちゃならない…なぜなら一流の名門大学に行きたいからだ。
俺はものすごく頭がいい。これはいじめられる原因でもあるが、ここで奴らに
手を出し退学なんかになったら名門大学に行けない。だから我慢してる…
「どうなんだよ~~。可愛い子ちゃん~~~」
「……か、か……かのぞです!!」
「ははははははははははははははははははは」
笑いの竜巻が起こる。そうとうテンパっていたのだろう、確実に噛んだ。そん
ことよりも、その発言は嫌がらせにしかならない。もう俺には否定する気力すら残っていなかった。
「お前に~~こんな可愛い彼女が~~?」
死を覚悟した……
…なにもされない。どうして…
その瞬間目を疑った。
少女が中心核の男に両手をつかまれ服のボタンをはずされている。
「はッ」
俺は少女のもとへ向かおうとしたが床に押さえつけられている。
「いやーーーーーーーーーーーーーーーー!!いやいやいや!!」
彼女の悲鳴と抵抗する姿が目に入る。
それと同時にあの時の光景がフラッシュバックする。
「学校…楽しみか?」
「…はい!!」
「やめろ…やめろーーーーーーーーーーーーーーー!!!!」
俺の声と同時に教室の窓ガラスが大音量で割れる。
「なッ」
その瞬間、この世のものとは思えないような黒い物体が3体入ってくる。
途端に俺を抑えていた男子生徒2人の悲鳴が聞こえる。そして上から液体のよ
うなものが降り注ぐ。
それは『血』だった。
教室じゅうに『血』が降り注ぐ。
それは雨のように降り注ぐ。
その中俺は………笑っていた――――――
書くペース遅いです。