プロローグ
凍りつくような寒さであった12月を乗り切り、ようやく正月を迎えようとしている頃、俺は東京都に位置する『教育機関守備特殊部隊』の本部にいた。
そこはとてつもなく広く、そして何人もの幼き青年たちが、ランニングや筋トレに励む光景、汗水垂らしながら一生懸命………
「なぁなぁ、お前はどこから来たたんだ?」
穏やかな笑みを見せ、俺に問いかけてくる。
「…俺は…って誰?」
「あーー、悪かった。俺は『栗原淳』、北海道出身、年は18だ。よろしくな。」
その男はまたもや穏やかな笑みを見せながら握手をしようと手を差し出す、もう友情なんてうんざりなんだが…
「俺の名前は『荒城四季』だ。出身は東京だ。よろしく。」
俺も笑いながら男の手を握る。
「地元かー。。今日来たばかりだが、都会は落ち着かないなー」
「そんな田舎から来たのか?」
「おい貴様ら!もう少し黙って歩け!」
先頭をはって歩く教官らしき男は俺らの油断にキレた。
「「ヘーイ。」」
互いに声をそろえ、返事を返す。その返答に教官らしきおっさんは俺たちが返した反省のかけらもない返事に俺たちをギロっと睨む。
教官らしきおっさんは病室のような所で立ち止まった。
「よーし!、貴様ら。一旦下着以外に身にまとっているものを・・全て脱げ!!!」
「「「は~~~~~~~?!」」」
場にいた男女数十名は教官らしきおっちゃんの言葉に初対面だというのに、仲良くみんなで叫んだ。俺もまわりに合わせて叫んでしまった。
男は興奮し女は非難するこの惨事。
「なに言ってんのよ!こんな所で脱げる分けないでしょー!!」
一人の女性隊員が女組を代表して怒る。その女の顔は不安そうで怖そうだった。
「なにを言っている。身体検査だ、女は上の階に行け。」
教官らしきおっさんは呆れたような顔で隊員たちに告げる。
「よかったー。最初からそういってよねーー。」
「わるかったわるかったー。八八八八八八。」
高笑う教官らしきおっさんに呆れ顔を残しその場を跡にした。
「なんで診察する先生が男なんだ~。…なぁ、四季」
「ん~。てかなんで名前で呼んじゃってんの~?」
「いいじゃん!もうダチだろ?」
「まぁいいけど、じゃあ俺も・・・・えー、、名前なんだったっけ?」
「ひでぇな!もう忘れたのか?!、淳だよ淳、栗原淳!!!」
「あーー、わかったわかった。淳な、OKOK。」
そんな平和な会話を俺は久しぶりにした気がする。まさかこんなに『友達』と話せる時がくるなんて、以前の俺では考えることもできなかっただろうな。
「てか、おい!!診察の先生の話ーーー!!」
「あーー、なんか言ってたな。診察の先生とヤリたいとか。」
「んなこと言ってねーーーーーーー!!じじぃじゃねーか!」
「おまえ、わざとだろ。さっきから言い間違えとか聞き間違えが重症だぞ。」
「もちろんわざとだ☆」
「お前ぇええええええええええええええええええええええ」
「戯れるのもここまでだ。そんな格好ではみっともないんで制服に着替えて来い。貴様らだけだぞ。ここにいるのは。」
教官らしきおっちゃんが呆れ顔で俺達2人を見下ろし父親のように発言する。
「「へーイ。」」
本日2回目の発動。教官らしきおっちゃんは俺たちを睨み付けその場を後のした。
「って。制服どこにあるんだ?」
「…」
淳の言葉に背筋が凍る。
「あ、あの人は…」
「…いない…」
「まじかよ。」
さがすしかない…
「ここじゃね?」
淳の示した先は教室のような形をしていて、外から窓の中が見えないようになっていた。いかにも嫌な予感しかしないところだが、迷ってられなかった。なんせ俺たちは、
「パン1」だから。
「失礼しまーす。」
頭の中が真っ白になった。思考がまったく回らず、直立してしまった。なぜかというとそこには、その場所には。・・・・
俺たちの先輩ににあたるであろう男女総勢40人程度の隊員が広い教室の中で授業をしていたからだ。
「失礼しましたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!」
顔を赤く染めながら教室からパン1で出て行く隊員の姿がそこにはあった。
「お前のせいでひどい目にあった。」
「わる・・・い、ハぁハぁ、、ほんと。に、ハぁ。。悪い。」
ダッシュで逃げたせいか、こうつはマジで堪えているらしい。
「別にいいが。これからどうする。」
「さがすしかないっしょ。」
「だよな。」
無駄に広いこの施設のどこかに眠る更衣室。
いったいいつまでかかるんだ・・・・
《涙がでそうだ。》
ここは、俺達人間が忌むべきもの。『怪奇物種』の殲滅を目的として創られた組織、通称『少年少女特殊部隊』。怪奇物種は中学生から高校生の捕食を好む。故にその対象のもの以外にはなんの害もない。だがとのかく見た目がグロテスクで、大きいものだと全長3mにも及ぶ。
なぜ俺達、少年少女が怪奇物種を駆らなければならないかと言うと―――
「貴様らーーーーーーー。待ちに待った本番だ!!これは訓練じゃない。どれくらいの死者がでるか分からない。各部隊が防衛する学校に怪奇物種は現れないかもしれないが、現れるかもしれない。奴等は自由奔放で気まぐれな奴等だ、知ってのとおり奴等の出没感知も時間予測も不可能に近い、それに加え生体すら明らかになっていない。この不確定要素満載の未知ともいえる相手に『銃』と『刀』と『魔法』駆使し、唯一奴等に対抗できるそれらの武器を駆使し、これらの武器で対抗できるという真実という名のヒントだけで
『貴様らの未来と、日本の未来を導き出せーーーーーーーーー!!!!!』」
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!」
大地が震え上がる。教官らしきおっ、、いや、教官の言葉にのせ新たな未来を切り開こうと決意した…
「…はずだった…」
うまくいくと。奴等を殲滅できると。…誰もが思った。
だが、誰もが思う。「そう甘くないと…」
《怪奇物種》がどんなに恐ろしいものかを、誰もが知る。