017 オススメデートスポット
「やっぱり気になるじゃないですか」
エルフが見に行くと、二人の様子をのぞき見るためのベストな席には先客がいた。
ホコロミとエルフは、彼らの様子をのぞくが、声は聞き取れない。
「女子生徒が二人いるけどどっちがアアルなんだ?」
「あっちの髪の長い方ですよ。もう一人は侍女ですね。貴族の女の子が男と一対一で話すことはまずないですから」
話は弾んでいる様子で、失敗もなく無事に終わったようだった。
タストは帰っていく彼女の後ろ姿が見えなくなるまで見送っていた。
「いやー、偶然だなぁ。マジ偶然通りかかったらタストが居たんだ。ああ、そういえばデートだったね。どうだった」
席に一人残って、それまでの会話を反芻している様子のタストにエルフが尋ねた。
「俺は、彼女と結婚したいな」
心ここに在らずな様子でいる、タストから本音が駄々漏れになっている。
また会って話すのだ、と幸せそうにのろけていた。
それから一カ月ほどして、エルフのもとに二人が相談しにやってきた。
「今度デートすることになったのですが、どこかいい場所を知りませんか?」
学校の周りのそれらしい場所はだいたい行った。遠い場所は彼女側の都合でだめらしい。お金のかかるような場所はタストの予算の都合上バツ。
「いや、そういう相談は第二書庫の主になっているような俺みたいなやつに相談するのは間違っているだろう」
「ああ!それだ!」
ホコロミが叫んだ。
「禁書の中に場所が記録されている物があったでしょ。その中なら誰も行ったことがなくて、近くて、お金もかからない」
その後で、三人はエルフが見つけた本の中からよさそうな場所を探した。
「わー、すごい。すごいわ!」
アアルは、はしゃいでぐるりと辺りを見回している。
タストとアアルの二人のデートにエルフも参加することになったのは、禁書の使用上仕方のないことだった。
花満開の野原の中心で愛の世界を築く二人を、エルフは邪魔しない様に隅っこで侍女の人と静かにしていた。
「……いい天気ですね?」
話しかけても返事がない。無視されているというより、ただ職務に忠実な人らしくわずかに頷いてくれたけど、それ以上会話をしてくれなかった。二人の様子をじっと注意深く見つめている。手を握るだけで精一杯なこの世界の恋愛は微笑ましくもある。
(でも、早く終わんないかなぁ)
そんなエルフの願いはかなわず、長い間二人は話していた。
このデートはアアルのお気に入りとなったらしく、その後さまざまな本でのデートをして、そのたびにエルフは侍女さんと待たされることになったのだった。