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016 参考書探し



翌日の放課後、タストとホコロミはエルフに会いに第二書庫へ向かった。


昨日と同じように椅子に座って、普通の本を読んでいる。

「昨日は助けていただき、ありがとうございます。できれば、昨日のあれが何だったのか教えてもらえませんか」

頭を下げる二人にエルフは答えた。


「詳しくは俺も知らない。ここに置いてある本は校長先生が集めて回った本らしいということぐらいしか聞いてない」

「ここに置いてある本は全部禁書だと言う噂をきいたんですが?」

聞きたくて仕方がない様子のホコロミが質問する。


「禁書?魔法で封印された本や法で規制された本のことかな?

ここに置いてある本は、魔術師や異種族が書いた物から正体不明の物まであるから、確かにそういうものかもしれない。

この学校の生徒なら貸し出しはできないけど、閲覧は自由だから俺はここで読んでいるだけだよ。

うわさってなんのこと?」


タストとホコロミは正直に話し始めた。気付けばお宝本のことから、タストの恋の悩みまですっかり話してしまった。

「エロ本探していたら、魔道書の中に巻き込まれたのか。それは災難だったね」


そう言うとエルフは立ちあがってそれまで読んでいた本を椅子の上に置いて、いっしょに昨日の本棚まで歩いた。

「この辺にある本で、思春期男子学生向け参考書だったらコレかな。噂の本はきっとこれだと思う」

背表紙には、学校行事記録と古い書体で書かれている。昨日と同じような魔法の本だった。


本を開きページをめくって、湖畔の風景のページを開いた。

「どっかの学校の水泳の授業風景を記録した物らしい」

この記録の世界には水着という物がなかったようで、女子学生は次々と動きやすい服装で水の中へ入って行った。

腰の丈くらいの深さらしく、泳ぐよりもお互いに水を掛け合って遊んでいる。若い女性のはしゃぐ高い声、他人の目を気にしない自然な仕草、ぬれた布が肌に張り付く。


(こうやって体感できるのはおもしろいけど、露出度からいうと海水浴場で見るビキニ姿の方がよっぽど色っぽくて、物足りない)

とエルフは考えていたけど、この世界の男女交際はかなり古風であったため、あとの二人には刺激が強すぎたぐらいだった。


「片思いして悩んでいるのなら、とりあえず思いを告白してみたらいいと思うよ。結果は、失恋するとか、ふられるとか、玉砕するとか、笑い者にされるとか、いろいろあるかもしれない。その時のために励ます内容の他の本も探してみるから。がんばれ」

エルフは別れ際に、タストに話した。

その言葉をタストは純粋に背中を押してくれていると受け取って、翌日手紙で告白した。




しばらくして、返事をもらったと二人でエルフに報告に来た。

自分の言葉がきっかけで失恋したヤツに何と言って慰めればいいか考えていたら、両想いだったと緩んだ顔で告げられた。


手紙の内容は、前々からあなたのことが気になっていた。友人たちと戯れたり、武芸の訓練を真面目にしている様子が素敵。その笑顔がとてもかわいい。

などなど、目の前にいるだらしなく笑う男のことを褒めちぎっている。

(いや、冷静になれ、こんな手紙おかしい、騙されているのだ。なんて言える雰囲気じゃないな)

「一緒にお茶する約束までしたんですよ~」

タストは幸せいっぱいの顔をしている。


閉館時間が近づき、エルフは寮へと変える道でホコロミにタストの思い人について尋ねた。

タストの思い人の名前はアアル。タストよりも年上のスタイルの良い美女で、少し天然気味。広い領地を持つ貴族の娘で、家族から溺愛されている。貴族、金持ち向けの女子寮に住んでいて侍女が身の回りの世話をこなしているらしい。


「彼女の親からは確実に反対されるな。金目当てだと思われる」

ホコロミの情報からいいひとっぽいから、エルフの中から純朴な若者をからかっている線は消えた。

「ですよね。でも、まだ手紙をやり取りしたばかりで、僕たち学生なんだから。タストが嬉しいそうだし、応援してやりましょう」

そういうホコロミの言葉を聞いて、エルフは二人のデートを盗み見ようと決めた。




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