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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第五節 分岐点

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依頼成立

 翌日、彼らはギルドを訪れていた。

 そのギルドも普通の村にあったものよりも数段大きく、やはり副都にあるギルド並みの広さがある。


 いつものように掲示板を見て依頼を吟味、しているように装いながらライト二人に聞く。


「なぁ、このやたらと集まる視線って」


「まぁ、昨日のことだろうなぁ」


「聞こえてくる感じだとあまり大きくはなってないようだが」


 掲示板を見ていてもひしひしと感じる視線、ヒソヒソと聞こえる話し声にライトはため息をつく。


『まぁ、いいんじゃない?』


『そうだね。あまり噂も変なことになってないみたいだし』


 他人事のように言う白銀と黒鉄。


 ちなみに彼女たちと会話ができるようになったのはほんの一週間前。

 それまではどうやらマナの吸収に集中していため会話ができなかったようだ。


 変に大きくなっていないことには安心したが、ライトはこの微妙な空気感は苦手だ。


 そんな時、急に周りがざわつき始めた。

 何事だろうかと彼らもその方を向いて驚いたように目を見開く。


 彼らの視線の先、ギルドの開かられた両扉の前には男性が三人いた。

 後ろに控えるようにいる二人は初めて見る顔だが、中央に立つ男性には嫌という程に覚えがある。


 昨日武器屋で言い争った男性、パブロット・ワイハントだ。


 商会ということもあり、ギルドに依頼を出すということ自体は何もおかしくはない。むしろ自然なこと。

 しかし、まさか代表自身が来るとは誰も予想していなかったらしく、小声で何かを言い合っている。


 そんな少しざわつき始めたギルド内でパブロットもライトを見つけたらしく、笑みを向けた。

 そして、護衛であろう二人の男性を侍らせながらゆっくりと握手できるほどの距離にまで歩み寄り声をかける。


「ギルドに仕事を頼みに来たのだが、ちょうどいい。君がいるのならば君に頼もうかな」


「唐突過ぎて話が全く見えないんですけど……?」


「おっと、そうだったね。失礼。なぁに、君たちにとっては簡単な仕事だよ」


 その内容を話し出そうとしたが彼も周りの喧騒に気が付いたらしく辺りを見回す。


「ここだと少し騒がしいね。商会の本部に来るといい。丁重にもてなすよ」


 昨日の今日でライトは警戒心をあらわにしてパブロットを見据える。


 なんとなく嘘を言っていないことはわかる。だが、相手は商人だ。

 ポーカーフェイスなど基本だろうし、もしかしたら何か隠し球があるかもしれない。


 そんなライトの露骨な警戒を見たパブロットは降参するように両手を軽くあげた。


「そんな目で見るのはやめてくれよ。昨日のことは私も反省している。この誘いはそのお詫びも兼ねてるんだよ」


 いまいち確信が得られないライトにウィンリィが言う。


「ライト、とりあえず受けてもいいと思うぞ。たぶん、嘘はついていない」


 ウィンリィの言葉を受け取り、デフェットの方にも視線で意見を求める。

 彼女もウィンリィの意見に同意しているらしく頷いた。


『とりあえず誘いに乗ってみたら?』


『そうそう、何が出るかはわからないけど、少なくともシリアルキラーみたいなやつは出ないでしょ』


 黒鉄、白銀の順にためらうライトに言った。

 彼らが言うのであればそれを信用する。たしかに彼からは自分を貶めるような雰囲気を感じられない。


(あんなのがポンポン出てたまるか……)


 白銀、黒鉄へと言葉を返し、少し考えて口を開く。


「わかりました」


 半ば渋々といった感じで頷くとパアッと表情を明るくさせ、ライトの手を引いてギルドの出口に向かい始めた。


「よかった。それじゃぁ、案内しよう。ついて来てくれ」


 そうしながら小さくライトの耳元で言う。


「本当のところは君を探してたんだよ。私は幸運だよ」


「は、はぁ……」


 どこか嬉しそうに言うパブロットにライトはそんな気のない返事を返すしかなかった。


◇◇◇


 場所は変わり、ワイハント商会の本部、その応接室にライトたちは通されていた。


 ライトとウィンリィが長椅子に座り、その後ろにデフェットが控える。

 それに対面するような位置にはパブロットが座り、彼の左右の後ろには護衛の男性二人が立っていた。


 すぐに椅子に座る者たちの前に紅茶が出される。

 パブロットが飲むのを見てから彼らも一口つけた。


 それを合図に彼は切り出す。


「まぁ、依頼としては最近この辺を荒らしている盗賊団、と言ってもほんの数人なんだけど、の討伐。

 あと、それにうちの商会の荷馬車が襲われてね。商品であったウージャが逃げちゃったからそれの捕獲だ」


 パブロットの言った仕事の難易度自体はそう高くはない。


 盗賊もおそらくどこか大きな組織からあぶれた者たちだろうし、ウージャもこの辺では食べ物となる草もあるためそうすぐに死ぬことはない。


 ただ、ライトの心の中に引っかかるのは––––


(盗賊の討伐……)


 それはつまり、人を殺すと言うことだ。


(また、殺す。殺せるのか?俺が……)


 罪人であれば、誰かの想いを踏み躙っているのならば切る。

 確かにそう決めた。

 だが、実際はどうだろうか。懇願されたら見逃してしまうのではないのだろうか。


 そんなライトの迷いから来た無言をパブロットは別のことのせいだと勘違いをして慌てて付け足す。


「ああ!そうそう、報酬なんだけど盗賊の討伐で五万、ウージャの捕獲で……そうだな。三十万出そう」


 その金額に目を見開いたのはウィンリィだった。


「三十万!?ウージャの取引価格の半分だぞ!」


「んー、どうだろう。

 逃げ出して管理していた餌とは別のものを食べてるから少し値は落ちるから……本来なら四十万ってとこかな?」


 無事に捕獲できて売れたとしても利益にはあまりならない。そもそも盗賊の討伐も数人の規模で五万は破格の報酬だ。

 誰が見ても損失の方が大きい話だということがわかる。


 それにすぐに気がついたライトが確認するように質問した。


「もしかして、お詫びって」


「そう言うこと……君たちなら余裕でできるだろう?」


 その問いにライトは黙り込む。

 人を殺す、そのことにためらいを覚える。

 だが、殺すことで救えるものもある。ならば自分は殺す。


 覚悟を決めるように軽く息を吐き、頷いた。


「わかりました。その依頼、お受けします」


 ためらう理由はあれど断る理由などライトにはない。


 その顔を見て嬉しそうに顔を綻ばせるとパブロットは護衛の一人に合図した。

 その男性は頷くと懐に忍ばせていた本来ならギルドに提出するはずの依頼書をライトたちに差し出す。


「それじゃあ、よろしく」

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