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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第四節 シリアルキラー

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新たな場所へ

 ポーラに招待され城を訪れてから三日が過ぎた。


 予想通り、シリアルキラーに壊された住宅街は七割方いつもの姿を取り戻し始めた。

 城や貴族の別荘に避難していた住人たちは新たに建て直された家に戻り始めている。


 風の噂でその復興にアヴィケーが関わったと言う話を聞いたが、その三日、宿屋の周り程度しか出歩いていないライトには確かめようのないことだ。


 もし本当ならば一言謝りたいがおそらくそれはできない。


 彼の居場所を知らないし、そもそもどんな顔で会えばいいのかライトにはいまだにわからない。


 それが心苦しい後悔だが、明日にはこの副都を出る。

 出会いと別れを経験したこの副都にいるのも今日が最後。


 夜の帳が下りたその宿場町、そこにある宿屋の屋根の上から夜空を見上げていたライトはマントから手のひらサイズの木箱を取り出した。


 それを開けると中に入っている金の勲章が月明かりを反射して輝く。


(結局、断りきれなかった……)


 何度も断ろうとしたが「騎士団には入らなくていいから」と言われてしまい結局受け取ってしまった。


 例え、人を殺したとしてもそれで守れた命がある。

 それで良いとポーラは言った。そのことを忘れるなとも言った。


 認めてもらえた。


 それで肩は軽くなったはずだった。


 だが、目を閉じれば頭に蘇って来るのはシリアルキラーに取り込まれた者たちの助けを求める嘆きの声。


 それが目覚めてからずっと彼の脳裏から離れることはない。

 ポーラに会った後もそれは変わらなかった。


 昼間はあまり意識しないが特に酷くなるのが夜、眠る時だ。

 目閉じて部屋が静かになると頭にあの声と光景が広がる。


 そんな状態で熟睡などできるわけもなく、仮眠を取るのがせいぜい。

 それも難しくなるとこうして夜風に当たりに出ている。


 こういう時に何かと言ってくるはずの白銀と黒鉄は未だに何も言ってこない。

 ライトからの呼び声にも反応してこない。


 おそらく、シリアルキラーとの戦闘の消耗が残っているのだろう。


 体力的にはまだ問題はない。

 しかし、精神はそうはいかない。


 眠い、だが目を閉じればあの声が出てくる。まともに休めない。


「主人殿」


 ライトに声をかけてきたのはデフェットだ。

 一体いつから彼女はここに居たのだろうか。少なくともついさっき来たような様子ではない。


「隣、構わないか?」


「え?あ、ああ……いいけど」


 デフェットは礼を言うと静かにライトの隣に腰を下ろし、彼と同じように夜空を眺め始めた。


 彼女がしたのはそれだけだ。

 何かを切り出すような、何かを待つような様子は感じられない。


 ただ、ライトの隣に居るだけだ。


「で、デフェ……一体」


「主人殿、最近眠れていないな?」


「……お見通し、か」


 その反応を見てデフェットは「やはりな」と言った様子でライトの方へと視線を向ける。


「なにが原因だ?悩み事か?」


「……シリアルキラーの声が、頭に残ってて、眠れないんだ」


「何かしらの魔術、か?」


「わからない」


 ライトの頭に聞こえ続けるシリアルキラーの声の原因はそれが放った精神攻撃の魔術だ。


 精神に対する魔術は強力であればあるほど、後にライトのように幻聴が聞こえるなどの後遺症が残る。


 だが、その事はライトにはわからない。


 そして、デフェットも彼が精神魔術を受けたことを知らないため、その考えにたどり着く事はない。


「アレを、倒したことを悩んでいるのではないのだな?」


 そのため、まだライトがそのことについて考えていると思い聞く。

 しかし、彼は首をしっかりと横に振った。


「それはない、と思う。全く後悔してないわけじゃない。

 でも俺がした事で救えた人がいるのは確かだと思ってるから」


 あの事については自分なりに結論を出すことができた。

 かと言って全く悩んでいるわけではない。


 だが、塞ぎ込む事はやめた。


 ライトが言うと二人の間に少しの沈黙が流れる。

 その沈黙を断ち切り、先に口を開いたのはデフェットの方だ。


「主人殿、部屋に戻ろう。

 眠れないからといってもそう長くここにいては体を悪くしてしまう」


「あ、ああ……そう、だな」


◇◇◇


 部屋に戻ったライトはマントを外すとベッドに腰を下ろして息を吐いた。

 眠れないにしても仮眠程度ならばどうにか取れる。


 ひとまずはそれで今夜も乗り切ろうと考えたところでふと顔を上げると目の前にデフェットがいた。


「ん?どうし––––」


 ライトが聞こうとしたところでデフェットは彼をベッドに押し倒し、そのまま馬乗りの体勢になった。


 突然の行動を受けてライトは思考が完全に固まってるとデフェットは切り出す。


「私は、そんなに頼りないだろうか」


「……は、え?」


「私は、主人殿の奴隷だ。

 主人殿の苦しみを、痛みを癒すのも奴隷の仕事だ」


 デフェットには彼が苦しんでいる詳しい理由はわからない。


 ただ、シリアルキラーの声が頭にこびりついていると言うことならばそれ以上のことで、衝撃で緩和させればいい。


 本来なら精神的苦痛を緩和させる魔術もあるが彼女は使えない。

 ライト本人もまだ使っていないということは使えないのだろうとデフェットは結論付けていた。


 だから、この行動に出ることにした。


 自分のにできることといえばこれしか浮かばない。

 自分の力のなさが悔しい。

 このようなことしかできないことに不甲斐なさまで感じる。


 それを表に出さないように、ライトに悟られないようにいつも通りにデフェットは振る舞う。


「優しくはする。痛みはないはずだ。

 だが、嫌であれば、突き飛ばして構わない」


 覆い被さり、迫って来るデフェット。


 魔術も使っていない彼女を拒否し、突き飛ばすのは簡単だ。

 だが、思考がまとまっていないライトはそれを拒むことができなかった。


 ただ、自身の唇と彼女の唇が触れた瞬間––––


(最低だ……俺)


 ライトは拳を握りしめていた。


 せめて彼女に悟られないように気丈に振る舞えていればこのような頼り方をすることもなかったのに。

 彼もデフェットと同様に自分の無力さに苦しんでいる。


 心ではそう思っている。

 精神的にはとてもそんなことをする余裕はないはずだ。


 なのに、体にデフェットの指が触れ、優しく撫でられる度に、快感が体を走る。


 彼女と深いキスをする度に静電気のようなビリッとした。

 しかし、心地よいその快楽が全身に走る快感を増長させている。


 それらにライトはただ身をまかせるだけだった。


◇◇◇


 翌日、ライトたちは南副都の外にいた。


 明るいとはまでは言わないが雰囲気はそこまで暗いわけではない。


「んじゃ、目的地は東だな。

 いいところを知ってるからそこに案内する」


「ああ、頼むよ。ウィン」


 ライトは答えてデフェットの方を見る。


 彼女は昨夜のことがなかったかのようにいつもと同じ表情と態度だ。


 自分は行為中、心ここに在らずといった様子だったせいでいまいち現実味がなかった。

 だが、おそらく彼女は違う。


 文字通り慣れている。

 奴隷としてそういうことは何度もしてる。


 それを言外に告げられているようでどこか心が痛んだ。


「ん?どうかしたか?主人殿」


「……いや、なんでも」


 顔を前に戻しウィンリィの背中が見えた。


 今はこの気分を少しでも考えたくない。その一心で問いを投げる。


「いいところってどんぐらい時間かかるんだ?」


「んー、一ヶ月ぐらいかな?まぁ、西からここに来る時よりは楽だよ」


 南から東方面へは荒野が広がっている。

 砂漠同様厳しい環境ではあるがまだ歩きやすい。


 また、野営の道具もきちんと揃えている。

 ウィンリィの言う通り幾分かは楽だろう。


「そうか」


 ライトは空に昇る太陽を手で軽く目を覆いながら見上げる。


 空にはわずかに雲が広がり始めていた。

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