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転生クリエイション 〜転生した少年は思うままに生きる〜  作者: 諸葛ナイト
第一章 第四節 シリアルキラー

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ポーラのお礼

 南副都サージにある大きな城。

 そこはその場所を治めるダウェド・ツー・サージが住む居城である。


 その舞踏会などに使われる広い会場。

 円テーブルがいくつも置かれ、さらにそれに敷かれたテーブルクロスの上には様々な料理がこれでもかと並べられていた。


 そして、その周りにはこの南副都を訪れていた貴族たちや階級の高い騎士がグラスを片手に、ダウェドが現れるまで雑談を広げている。


 そこにはポーラに招待されたライトたちもいた。


 一般人で招待されたのはライトたちだけらしく、他の者はほとんどシンプルでありながらも高級感の漂う服を着ている。


 明らかに自分たちの姿は場違いで来たことを後悔し始めた頃、その会場奥の大扉が開かれ、四十代後半の男性が入ってきた。


 その男性を見ると一斉にその男性の方に向かい頭を下げる。

 ライトたちも少し遅れはしたがそれに習い頭を下げた。


「顔を上げてくれ」


 男性の言葉で一斉に顔を上げた。

 彼らを軽く見渡しているのがダウェド・ツー・サージ。

 恰幅の良い男性は続けて彼らへと言葉を投げかける。


「まずは申し訳なかった。

 今回の騒動、私たちの監督がなされていなかったことが原因だ。

 皆の者を危険に晒し、重ねて謝罪する。合わせて守るためにその命を燃やした者たちへと労いの言葉を送る」


 ダウェドは言うと目を閉じ、胸に手を当てた。

 それに合わせて数名、亡くなった者に祈りを捧げ心の中で言葉をかける。


 少しの無言を挟んだ後、ダウェドが口を開いた。


「復興の件だが、すでに多数の出資の約束を交わした。

 これらは早期の復興のためにありがたく使わせてもらう。

 また、それに合わせ、今回はこのような会を開かせてもらった。ぜひ、これより先のため英気を養ってもらいたい」


 彼の会話が終わったことを確認し、乾杯の音頭か何かあると思っていた貴族や騎士たち。

 だが、ダウェドが入ってきた扉の横に移動したのを見て訝しげな表情を浮かべた。


 しかし、それも一瞬のことだ。


 ダウェドが横に移動した扉からは豪奢なドレスを身にまとう一人の少女、ポーラが入ってきた。


 それを見て全ての者が顔を強張らせ、礼をしようとしたところで彼女は告げる。


「そのままでお願いします。

 今回、私は視察のために訪れた身。皆さまと同じ立場の人間ですので」


 その言葉を受けて彼らは少しためらいながらも、軽く会釈する程度で済ませた。


 その中でライトを見つけたのかポーラはライトたちへと軽く笑みを浮かべると彼女は続ける。


「皆さまも見た、もしくは聞いたはずです。

 あの白い怪物、そしてその力を」


 貴族と騎士たちは当然だと言うように頷く。

 あるいは思い出しているのか体を震わせる。


 ライトたちの脳裏にもシリアルキラーの姿が浮かんだ。


 そしてそれはポーラも同じなのか、少しの間を置いて再び口を開く。


「しかし、私たちは生きてる。

 それは一重に騎士の皆様と御尽力いただいた冒険者たちのおかげであると私は思います」


 それに強く頷いたのは騎士たちだ。


 彼らには少し悔しいことだが、住民の避難で精一杯だったため、シリアルキラーの足止めをろくにできなかった。


 その代わりになったのが冒険者たちだ。

 それは実際に戦場に出た者が一番よく理解している。


「今回はその冒険者の方々を代表して、とある方をお呼びしております」


 ポーラはそこで言葉を切ると手でライトを指し示した。

 その手に従い、向けられた視線がライトたちへと注がれる。


 やはり明らかな一般人である彼らがなぜここにいるのか気になっていたらしく、その顔は疑問氷解と言わんばかりだ。


「どうか勇敢な騎士とそれに続いてこちらに来れなかった冒険者。

 そして、白い怪物を討ち取ったライト様へ今一度心よりの感謝を」


 ポーラは頭を下げるとふっと表情を和らげる。


「では、皆様、短い間ですがどうぞこの決起会を楽しみ、そして、復興への尽力を無垢なる民のためにお願いします」


 彼女はそう締めくくりその舞踏会会場から出る。

 それと同時にライトたちの後ろにはいつの間にか夕方に迎えにきた執事がおり、声をかけてきた。


「ライト様、ウィンリィ様。ご案内しますのでこちらに」


 有無を言わせず執事の物言いに彼らは少し戸惑いながらも続いて会場から出て行く。


 それから五分ほど廊下を歩いたが、その間執事とライトたちの間で会話がされることはなかった。


 彼らが気まずさを感じ言葉を発しようとした時だ。


「到着しました」


 そう言って止まった執事の隣にあるのは扉だった。

 変に豪奢な飾りはされていないが、丁寧な造形の扉だ。


「ポーラ様。ライト様達をお連れしました」


「ありがとうございます。どうぞ、入ってください」


 執事はその声を聞くと扉を開き、中へ入るようにライト達に勧める。


 中は思っていたよりもかなり広い。


 奥にはベランダと大きな窓があり、天蓋付きのクイーンサイズのベッド、その脇には化粧台。


 それらの隣の広い空間に向かい合わせに置かれた二つのソファ、その間にはローテーブルが置いてある。


 そのソファに座っていたポーラは立ち上がると笑顔でライト達を迎え入れた。


「ご足労いただきありがとうございます。

 どうぞそのソファにお座りください。

それと、あなたは料理をお願いできますか?」


 言われたライトとウィンリィはソファに少し躊躇いがちに座り、その後ろにデフェットが立つ。


 そうしている間に執事はポーラの指示に「了解しました」の返事とともに礼をして部屋から出た。


 同時にポーラの斜め後ろに控えていたメイドはワゴンに予め用意していた道具類でジュースをグラスに注いだ。

 それをデフェットと自分以外のそれぞれの前に差し出す。


「申し訳ありません。

 皆さまはあのような場所では落ち着かないだろうと思ったのでここに来ていただきましたが……

 ご迷惑でしたか?」


 どうやらポーラはライト達の立場を考えてこの場所に案内してきたらしい。


 彼女が不安視しているのはパーティを楽しむ暇や本人達の意思を半ば介入させずに連れてきてしまったこと。


 しかし、ライトたちにとってはあの空気は慣れず、渡りに船であった。


 そのことをライトが素直に口にするとポーラは「よかった」と胸を撫で下ろした。

 そんな彼女へと言葉を探るようにライトは質問を投げる。


「あの、それで……なぜ、私を呼んだのですか?」


 ライトの問いにキョトンとした様子でポーラは首を傾げた。


 そして、記憶を探っているのか少し視線を斜め上に向けるとすぐにライトへとその視線を戻して言う。


「それはお手紙にも書きましたでしょう?

 お礼をしたいのです」


 笑顔で言うポーラとは裏腹にライトは表情を曇らせて返す。


「私は……私はあなたの様な方からお礼を頂くようなことは何一つしていません」


 ライトはそれをきっかけにシリアルキラーについて、自分が体験したことについての全てを話した。


 時々、ウィンリィとデフェットが補足説明を付け加えての話。


 ポーラはそれを真剣な眼差しで聞いていた。

 度々、頷いたり驚いたように目を見開いたりと表情は変わっていたが、口を挟むことなく聞いていた。


 そして、ライトたちが全てを話し終えてようやくポーラは口を開いた。


「……それでも私はあなたにお礼をしたいのです」


「もう一度言います。

 シリアルキラーは人間です。私は私自身のために人を大量に殺した者です。

 それでも、ですか?」


「殺さなければ、切り捨てなければ救えない者もいます。

 あなたがそれを決意していなければ私は間違いなく死んでいました。

 そして、他の者たちも今この場にいることなど叶わなかったでしょう」


 それはそうだ。とライトはすぐに思う。


 シリアルキラーを倒さなければ確実にこの南副都は死の都と化したことだろう。

 あれはこの世界でも常識の範囲から外れた特異な存在だった。


 しかし––––


「それでも、己のために殺したという事実に変わりはありません。

 それで礼を受けるなど……」


「ですが、それ以上にあなたは救った」


 ポーラはそれでもと笑顔を浮かべる。

 包み込むような優しい笑みを浮かべて続けていた。


「誇っていいのです。もっと胸を張っていいのですよ」


 ポーラは言うと目配せでメイドに指示を出した。


 彼女は深々と礼をすると奥の小さい机に置いてあった手の平サイズの小さい木箱を持ってくるとポーラへと渡す。


 彼女はそれを受け取り、開けて中を確認するとそれをローテーブルに置き、ライトの方へ突き出した。


 出された木箱、その中には金色に輝く勲章が入っていた。

 三本の剣が交わり、その両サイドに大きな翼のデザインがある勲章。


 ライトはもちろん、この世界に生まれ育ったウィンリィとデフェットですら知らない勲章であった。


「あの……それは?」


「名誉騎士勲章です」


 それを聞いた瞬間にウィンリィが目を見開いてポーラの方を見た。

 その反応を見てポーラは説明を始める。


 名誉騎士勲章。

 それは言い換えれば貴族からの騎士団へのスカウトだ。

 本来騎士団に入るには騎士から何かしらのことで推薦されるのが絶対条件。


 しかし、この名誉騎士勲章を受けた者はそれ無しに騎士団への入団が可能となる。

 さらに、騎士団内の中でも騎士に推薦されて入団した者よりも上の位での入団となる。


 実力を貴族に直接認められた。そんな者にのみ与えられるような物がこの勲章だ。


「武勲を上げたものには正当な評価を。

 それは人の上に立つ者、王家の当然の責務です」


 正当な評価がなければ士気が下がり、能力は低下。

 下手をすれば別の待遇のいいところにスカウトされ、そのまま敵になる可能性まで出てくる。


 そう考えれば破格とも言える褒賞を与えるのは当然のことではある。

 ライトもそのことはわかる。


 しかし、それでもライトは首を横に振り、勲章が入っている木箱を押し返した。


「これは受け取れません」


「なぜですか?」


「私の行いは私のものです。誰かに評価されるわけにはいきません。

 それに、騎士になるつもりはありませんから」


 それを聞いてポーラは首を横に振り、それを再びライトの方へと突き出す。


「あなたを騎士にしたくてこれを渡したわけではありません」


 彼女が言うには何もこの名誉騎士勲章を授与されたからといって騎士に必ずなるわけではない。


 あくまでも騎士団へのスカウトであり、それをいつ受けるかは授与された本人に一任されている。


 ただ、貴族たちからの誘いを平民や根無し草の冒険者がおいそれと断れないため、実質的に強制となっているだけだ。


「それに、これは私の感謝の気持ち、なんですよ?

 あの光で私たちを救った。そのお礼です」


 ライトはそれを聞きながら視線を勲章が入った木箱へと手を伸ばした。

 だが、それを持ち上げることはしない。


 ポーラはライトの方へと身を乗り出し、彼の手を握りしめる。


 ライトが顔を見上げたその先にはポーラがいた。


 見た目は十代後半。

 しかし、彼女が浮かべるその顔は包容力の豊かな母親のような優しい表情を浮かべている。


「ライト様はその手で多くを殺した。その行い、背負うものはあなたのものです。

 しかし、その手で救った者がいる。

 そのことだけはどうかお忘れなきよう、お願いします」


 自分の行いを悔いるのは間違いではない。


 その行いを背負うのはむしろ正しいことだ。


 ただ、そのことばかりに目を向けていては自分が守った存在にすら気がつけない。


 ポーラはライトの手を優しく包みながら手を持ち上げ、それを額に当てた。


「今一度、ライト様に心よりの感謝を……」


 それから五分ほどして届けられた少し豪華なサンドイッチと明らかに安くはないジュースを飲んだ。


 その間にした会話は今までの旅の話など他愛のないような物ばかりだった。


「感謝、か。あれで、俺は救えたのかな……」


 宿へと戻る馬車に揺られながら、呟くライトのその手には名誉騎士勲章が入った小さな小箱があった。

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